13.そらのおさんぽ
「どう、どう!」

ハグリットが声を荒げながらつれて来たその生物をなまえははじめて見た。
皆その生物に驚いているらしく、おしゃべりをするものは居なかった。

ハグリットの持っている鎖の先に繋がれているのは、馬とも鳥とも取れるような生物。
矜持の高そうな瞳、立派な鉤爪、滑らかそうな毛、きりりとした顔つき。
なまえはきらきらした目でその生物を見つめていた、どうもなまえは動物が好きなようだ。

「まずイッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねえことは、こいつらは誇り高い。絶対侮辱しちゃなんねえ」

なまえはその話をしっかりと聞いていた。
その目は今まで見たことがないくらいに輝いていて、楽しそうだ。
その後もハグリットはヒッポグリフとの接し方を熱心に教えていた。

「よーし、誰が一番乗りだ?」

その他の生徒が後ずさりする中、なまえだけ一歩前に出た。
その小さな手を珍しくしっかりと上げている。

『なまえ?大丈夫なの?』
「お?みょうじ、やるのか?」
「やります」

その行動に驚いたのはリドルだけではない、その場に居た生徒全員が驚いた。

今まで授業を受けていてもいるかいないか分からないほどに静かな生徒のイメージがついていた。
そのためなまえが積極的に授業に参加するなど、ネビルが一日中何も失敗しないということくらいに珍しいものだった。
そんな周りの視線など気にせず、なまえはハグリットの隣に立つ。

その次にポッターが立候補して、2人でやることになった。
その際、後ろのほうに居たグリフィンドール生がポッターに何か言っているようだったが、ポッターはそれを無視してなまえの隣にたった。

「よーし、そんじゃあハリーはバックビークと、みょうじはイザベラとやってみよう!」

ハグリットは灰色のヒッポグリフと漆黒のヒッポグリフを群れの中から引き離し、首輪を取った。
なまえのほうにきたのは漆黒のヒッポグリフだ。

ハグリットはポッターのほうばかりを見ている。
なまえは先ほど言われたとおりに綺麗にお辞儀をした、お辞儀はお国柄上得意だ。
すっと顔だけ上げてイザベラの目を見る、彼女の瞳は綺麗な青をしていた。
その青に見蕩れるようになまえはじっと目を合わせる。
大空を思わせるような透き通った青、体毛の黒とのコントラストが美しい。

そんなことを考えていると、イザベラもすっと頭を垂れた。
なまえはそれを皮切りに、ぐっとイザベラに近寄る。
手を伸ばせばイザベラのほうから頭をこすり付けてきた、見た目よりもずっと柔らかい羽毛の感覚が手の甲に触れる。

「綺麗ね、その瞳。ついじっと見ちゃった。ごめんね」

くちばしを撫でながら、イザベラの瞳を見つめる。
なまえの言われた言葉の意味がいまいち分からないのか、きょとんとしている。

その隣でポッターがまだ灰色のバックビークにお辞儀をしていた。
ハグリットはずっとポッターを見ていてなまえには気づいていなかった。
なまえがバックビークのほうばかり見ているとイザベラが拗ねたように手を甘噛みしてきたので、イザベラを撫でつつその様子を見守る。

「やったぞ!ハリー!おお、みょうじもできとったか!偉いぞ!」
『あいつ、ポッターのことばかり見ていて。なまえに何かあったらどうするつもりだったんだろうね』

なまえからできる限り離れたところで様子を見守っていたリドルが怪訝そうにそう言う。
動物は人よりも霊的なものを見やすいとなまえが言っていたのを思い出し、なまえから離れていたからもしイザベラが暴れ始めたらリドルもなまえを助けられない。
その事実にいらだっているようだ。
当のなまえは特にそれを気にすることなくイザベラとじゃれあっていた。

「ハリー、みょうじ、こいつらはお前さんたちのことを背に乗せてくれると思うぞ」
「是非」
『なまえ!君、運動神経皆無だろう?!』

ポッターは戸惑ったようにしていたが、なまえは即答だった。
なまえの運動神経のなさを知っているリドルは慌ててなまえをとめようとするが、遅かった。
すでになまえはハグリットの手を借りてイザベラの首の辺りに乗っかっている。
イザベラは嫌がることなくなまえを乗せ、その場に待機している状態だ。

なまえから離れられないリドルは、仕方なくイザベラの傍に近づく。
イザベラはリドルの存在に気づいたらしく、警戒するように見つめる。
慌ててリドルがお辞儀をすると、ややしてイザベラもお辞儀を返した。
何も居ないところに向かってお辞儀をする姿に、マルフォイたちが可笑しそうに見ていたが幸いイザベラは気づいていなかったようだ。

「そーれいけ!」

ポッターがバックビークに乗ったところで、ハグリットが2匹の尻を叩くと2匹は各々別の方向に駆けていく。
イザベラは空高く飛び上がり、城の上空を駆けるように飛ぶ。

「すっごーい!!ねえ、リドル!すごいね!」
『なまえ、君1年のときの飛行訓練で飛んでないの?』
「5メートルも浮かなかったの!これ、何十メートルくらい飛んでるのかな?!」

なまえは空を飛んでいるということに興奮しているらしい。
叫ぶようにリドルに話しかける、きらきらとした瞳、無邪気な笑顔。
13歳相応の明るい笑顔に、リドルはどこかほっとしてなまえと会話できた。

箒を使って空を飛んだことがないなまえとは逆に、箒でしか空を飛んだことがない(最近は何もしていなくても浮いているのだが)リドルは少々困惑気味だった。
なまえが両手を離したときは慌てたが、慣れればなんてことはないのかリドルも途中から楽しんでいた。
イザベラは安全重視らしく丁寧に上空を飛び、木の少ない場所を見つけて地上に降り立った。
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