122.2人の先生
学校の前でマグコナガルが待ち構えていた。
ひっつめ髪に、きっと吊り上がった眉、怒っているような気がする。
別に悪いことをしていたわけではないのに、背筋が伸びる思いだ。

なまえはポッターたちの後ろに隠れるように立った。
しかし、マグコナガルはなまえにも気づいていた。
マグコナガルはきびきびと前を歩き、いつもの変化術の教室へと連れられた。

先にポッターたちとケイティの話を聞き、先に4人を返した。
そこでも、ポッターはドラコが犯人だと言い張り、それを聞いたうえでマグコナガルがドラコにはアリバイがあったと伝えた。
ポッターは愕然としていたようだが、なまえは1人なるほどとうなずいた。

そして、なまえだけがその場に残された。

「いつもあの3人かと思いましたが、珍しいこともあるものです」
「偶然ですが」
「まもなくセブルスが来ます。が、その前にあなたにも話を聞きたいのです」

なまえはマグコナガルと目を合わせた。
マグコナガルは決してなまえを疑っているわけではない。
ただ、平等に接しているだけのように感じた。
なまえはマグコナガルのそういうところが、好きだ。
少なくとも、ダンブルドアよりかは好意を持っている。

素直に頷いて、質問を待った。

「ポッターたちと会ったのはどこですか?」
「駅へと向かう一本道です。今日は三本の箒にも行っていません」
「誰かと一緒にいましたか?」
「…はい」

疑われているわけではないようだが、一応行動を確認されているらしい。
確認したところで何がわかるわけでもないだろうが。
なまえは最低限のことだけ答えることにした。
別になまえが話さなかったことについて、何か起こることはない。

マグコナガルは誰といたのかとは聞かず、呪いが起こった時のことを事細かに聞いていた。
なまえも見た限りのことを答えただけだった。

「…ポッターよりも冷静な様子ですね」
「このご時世ですし」

スリザリンでも不穏な空気はある。
特に気になるのが、今回のドラコの一件だ。
ポッターがやたらに食って掛かるのも気になる。
ドラコが何かしそうなのを、ポッターも感じ取っているのだろう。
犬猿の仲だというのに、よくわからない絆でもあるのだろうか。

なまえの一言に、マグコナガルは少し眉を潜めた。
16歳の子供が言うようなことではなかったのかもしれない。

「あなたに何もなくてよかった」
「…ありがとうございます」
「ああ、セブルスが来ましたね。彼と一緒に寮にお戻りなさい」

マグコナガルは心底ほっとしたように、そういった。
なまえは少し目を丸くしたが、その後きちんとお礼をした。

マグコナガルはいつだって公平だ。
ダンブルドアのようになまえにリドルの面影があろうと、薄闇を纏ったような雰囲気を纏っていようと、一般的な生徒と同じように見てくれる。
なまえはマグコナガルのそんなところが、どの教師よりも好ましく思えた。

「これが呪いのネックレスですな?」
「そうです。…どう思いますか」
「…ケイティは幸運でしたな。みょうじ、お前も」
「私ですか」
「素手で触ろうものなら、お前にも呪いはかかっていただろう」
「…素手では触りませんよ、流石に」

一方部屋にやってきたスネイプはなまえを一瞥しただけで、そのあとはテーブルの上に載った呪いのネックレスに杖を向けたり、観察したりとそちらに夢中だ。
なまえはその様子を隣で眺めながら、早く帰りたいと思った。
スネイプが今見ているネックレスよりも強力な呪いがかかったペンダントがなまえの鞄の中にはある。
持ち物検査はうまく切り抜けられたが、何かの拍子にばれてしまわないかとひやひやする。
何より、まだ体調が優れないみたいだ。
長く立っていたせいか、足がずっしりと重いような気がする。

スネイプが馬鹿にしたように言うのを、なまえはため息をつきながら切り返した。
流石にほかの生徒に呪いをかけるようなネックレスを素手で持つような未熟な真似はしないし、何よりずっと手袋を付けっぱなしだったから、基本的に素手で触れるようなことはない。
今も手袋をしたままだな、となまえは両手を軽く擦り合わせた。
まだ身体が冷えているらしい。

「先生、もうこの時間ですし、帰らないとパンジーたちが心配します」
「ええ、そうでしょうとも。セブルス、そのネックレスについては後で話を聞きます」
「…そうですな」

下らない話で立ち時間を伸ばしたくはない。
なまえはスネイプを見上げながら、早く帰らせろと急かした。
スネイプはなまえをちらと見て、怪訝そうに目を細めた。
そして、なまえの前を長いローブを翻らせながら歩きだす。
なまえは慌ててその後を追った。

廊下は相変わらず冷え切っている。
スリザリンの寮に近づくにつれて、寒さは厳しさを増していく。
寮につながる廊下、教授の部屋の前で、スネイプは足を止めた。
スネイプとある程度の距離を取っていたなまえは、スネイプと同じように足を止めた。
彼は、振り返ってなまえを見た。

「…みょうじ、お前鞄の中に何を入れている?」

その瞬間、光線がスネイプに向かって飛んだ。
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