109.交錯する影
ノクターン横丁は以外にも静かだった。
昨年とそう変わらず、怪しい人々が練り歩き、労働者たちは警戒しながらも働きに出ている。
なまえもまた昨年と同じように、人狼街に行った。
結果として人狼街は手を出されておらず、昨年と同じように暮らせているという。

「意外と大丈夫なもんだね」
「まあ、昼の表面上はね…、おっと」

ノクターンに戻った途端に心配性をこじらせたリドルは、最近実体化をしてなまえのそばにいる。
実体化したリドルはできる限り人に見られないように、すっぽりとフードを被り、なまえの半歩前を歩いていた。
なまえはその陰に隠れるように、フード付きのポンチョを揺らして後をついていく。

背の高いリドルが唐突に止まったため、前につんのめるような形でなまえは足を止めた。
背中にぶつからなかったのは、彼がいきなり実体化を解いたからだった。
ボージンアンドバークスのある通りにつながる曲がり角を、見覚えのあるシルバーブロンドが曲がっていった。

『一人だったね』
「一人?」

別にドラコがノクターンにいるのは珍しくない。
マルフォイ家に手を出すような人はここにはほぼいないとみていい。
だから、マルフォイ家当主がアズカバンにいる今もだ。
それほど、家の名前は偉大で重い。

ただ、マルフォイ家とはいえ、未成年の魔法使いが一人というのは、よろしくない。
リドルが眉を顰めて、曲がり角を睨んでいる。

「何するつもりだろ?」
『…あとで聞きに行くとしよう。愚図るようなら僕が出るから』
「んー…」

なまえは曲がり角の先、ボージンアンドバークスがある方を見ていたが、やがて踵を返してオリュンポスのある方へと歩いて行った。


なまえが歩いていくのを、エヴァーグリーンの瞳が屋根の上から見ていた。
ドラコとその母親を見つけて追いかけてきたが、意外な人まで見つけた。
大人しい東洋人のスリザリン生、なまえ・みょうじ。
確かセドリックと仲がいい、成績優秀な子。

「…なんでみょうじが」
「しかも一人で…?危ないわ」

低い背が塀の向こうに消えていく。
その足取りに迷いはなく、恐れもないような気がした。
慣れた様子でノクターンを歩く彼女は、いったい何者なのか。

ドラコも気になるが、彼女のことも気になる。

『…直し方を知っているのか?』

ドラコがボージンアンドバークスの主人と話している声が、伸び耳から聞こえた。
ロンとハーマイオニーはそのドラコの言葉を聞き逃さないようにと、伸び耳に耳を寄せた。
ハリーはノクターンの奥に消えていくみょうじの小さな背中を見送り、2人と同じように、ドラコの話に耳を傾けた。

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