100.談話室にて
ザ・クィーブラーは、学校では閲覧禁止になってしまった。
なまえはセドリックから貰った一冊があったため、読み返すことができた。
パンジーがそれをみて、魔法でコピーを取って寮内に回したため、スリザリン生のほとんどはその内容を知ることとなった。

ポッターのインタビューを見てのスリザリン生の反応は、まちまちだった。
憤るもの、無関心を貫くもの、面倒なことになったと思うもの…どちらにしても、喜ぶものはいなかった。

スリザリンではザ・クィーブラーの話はあまり盛り上がりを見せず、すぐに沈下してしまった。
殆どの人間がザ・クィーブラーに対して信頼性がないと思っていたからだ。

「にしても、この記事むかつくわねー」
「そうか?」
「そうよ。何の根拠もないこと言いだしたらキリないってのに、それなりに発言力があるやつがこういうこと言うと混乱を招くだけよ」
「まあそうかもな」

しかし、中にはその記事を引きずる生徒もいるわけで。
特にパンジーが顕著だった。
もともとポッターのことを嫌っているからかもしれないが、彼女の言い分も一理ある。

ただし、根拠云々の話は目撃情報があるのだから無いとは言い切れない。
何より、なまえはセドリックからの話も聞いているので、それが根拠のないことだとは思わなかった。
セドリックの言葉がない状態で聞けばそう思えたのかもしれない。

ザビニは天文学の本を捲りながら、興味なさそうに答えた。
その隣ではノットが妖精学の本を読んでいる。
なまえは背後のリドルに見えるように新聞を捲っていた。

「で、パンジー、お前OWL大丈夫なんだろうな?」
「…やってるわよ、なまえと一緒に!」
「おーおー。そりゃ安心だわ。なまえと一緒ならな」
「失礼ね、そういうザビニはどうなのよ」
「お前、俺の順位確認してからそれ言えよ」
ザビニがもうその話は十分だといわんばかりに、別の話題を持ち出した。
パンジーはムッとした様子でザビニの質問に答えた。
彼女は勉強関係のことで口出しされることを嫌う。

なまえ、パンジー、ドラコ、ノット、ザビニの中で最も成績の順位が低いのはパンジーである。
低いといっても酷いわけではなく、ただ他の4人がやたらいいだけの話で、中の上くらいはある。
しかし、負けず嫌いなパンジーはその順位に甘んじることなく、努力を続けている。

なまえからすれば、妖精の呪文がやたらに苦手なノットのほうが心配である。
ノットは教科ごとの得意不得意の幅が広すぎる。
ちなみにザビニとドラコは平均的に良い点を取る。

「ところでドラコ遅くね?」
「さっき、廊下でレイブンクローの女子をアンブリッジに突き出してたけど」
「へー、とうとう尾っぽ掴んだのか」

今まで静かに本を読んでいたノットが間髪入れず答えた。
どうやら彼も話は聞いていたらいい。

ザビニはその話を聞いて意地悪そうに笑った。
曰く、男子寮では毎晩のようにドラコがポッター率いるグループを摘発するための情報を聞いて回っていたらしい。
ここまで来ると、凄まじい執念だといえる。

彼がそんなことをしていたとは、となまえは呆れ半分心配半分だった。
OWLの対策、言い換えるのであれば知識を得ることよりもポッターが重要なのかと。

「そんなことしてる暇ある?」
「動いてないと落ち着かないんだろう」

ぼそっと零したなまえの言葉を拾ったのは隣にいたノットだけだった。
動いていないと落ち着かない。
それだけの焦燥がドラコの中にあるのだ。

ドラコは失うことを知らなかったのだろう。
なまえはそう思った。

今まで何不自由なく育った彼は、15にして初めて失う可能性を見た。
初めてのことで、失わないために何をしたらいいのかわからない。
そして、ドラコには自信も羞恥心も自尊心もある。
だから、ドラコは足掻いている。

「ドラコは幸せ者だから」
「明日は我が身」
「そうだね」

独り言を連ねるような会話に、なまえは口の端を吊り上げた。
後ろでリドルがつまらなそうに、なんで君は彼と付き合わなかったんだろうね、と呟いた。


prev next bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -