09.ひとすじのひかり
新しい教科書も全て手に入れた。

いつも教科書を買うときと銀行に行くときだけ、私はダイアゴン横丁に行く。
ダンブルドアから貰った金庫には奨学金が入っていた。
一応そのお金を使って教科書を買った。

バイトの給料は相当たまった。
これで新しい本や教材も買える。
そうすれば学校で習う以外の呪文や魔法薬が作れるようになるかもしれない。
リドル曰く、

「禁じられた森には滅多にとれない高価な薬草の宝庫だ。その上、それから作る薬は更に高価なんだよ。なまえは魔法薬学が得意なようだし、それを作って卸売りをすればいいよ。そうすればいい金になる。バイトもしないですむ」

そういうわけで、魔法薬の勉強に重点を置いて勉強をしている。
そして、もう一つ夏休み中に重要な魔法を身につけた。


なまえの風邪が治って数日後のこと。

リドルはよく新聞を読んでいた。
その新聞には毎日、同じ人間の写真が載せられ続けていた。
シリウス・ブラック、アズカバンを脱獄した囚人だそうだ。
そして、魔法省と吸魂鬼が彼を探し回っている。

「このままだとこの辺りにも吸魂鬼が出るかもしれない。ノクターン横丁はそういう者の溜り場だからね」
「吸魂鬼って何?」
「人の幸せな気持ちを吸う気持ち悪いものさ。気分が滅入ったり気分が悪くなったりする」
「…幸せな気持ちがなかったらどうなるの?」

ベッドで魔法薬学の本を読んでいたなまえがぽつりとそう言う。
リドルはなまえのほうを見たが、なまえはまだ本に目をやっていた。
少し考えてリドルは答える。

「何も起こらないかもね」
「じゃあ大丈夫じゃない?」
「でも何か起こるかもしれない」

吸魂鬼のキスさえ執行されない限り、なんら問題はなさそうだが。
とはいえ何かが起こる可能性がないとも言い切れない。
それになまえは精神的に弱い、何か昔のトラウマが引き起こされて発狂でもしたら。
今度こそ、壊れてしまうかもしれない。

「だからなまえ、吸魂鬼からの防衛呪文を覚えよう。どちらにしたって有益な呪文だよ。難しいけど」
「うん」

なまえはようやく本から目を離し、リドルを見た。
闇色の瞳と、深紅の瞳がようやく合う。
その日から2週間ほどでなまえは守護霊の呪文を覚えた。

なまえは当初自分を守護してくれているものなど居やしないといっていたが、自分の出した守護霊を見て納得の様子だった。
リドルは少し戸惑っているようだった。

「…ありがとね、リドル」
「何で僕なの」
「違うの?」

なまえの出した守護霊は蛇の形をしていた。
去年の話をざっとリドルに聞いていたなまえにとって、蛇に思いあたる人物はスリザリンの後継者だというリドル以外に居なかった。
小首をかしげて問うなまえにリドルは照れたようにそっぽを向いた。
ちろちろと舌を出す守護霊をなまえが一撫すると、それは消えた。

「これで禁じられた森に入っても問題はないと思うよ。危ない生物も居るけれど気をつけていれば大丈夫だから」
「うん、そうだね」

卸売りの相手もできたということもあり、なまえもリドルもほっとしていた。
来年の夏休みにはバイトをやめて薬を作りながら勉強ができる。
それを糧に今年一年を頑張ろうと、なまえは考えていた。



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