期待は裏切られるもんだ
運動会は、運動部が主役だ。
私みたいに全く運動部に所属していない人はオマケ。

「運動部が主役、のはずじゃないの?」
「悪かったですね、足が速くなくて」
「足だけじゃなくて、耐久力もないよね…?」
「…苗字さんさんは僕のことが嫌いですか」

うちの中学の運動部代表、バスケ部の肩書を持っているはずの黒子だが、まさかのリレーで3人抜きをされる側になっていた。
私たちのクラスは運動部が少ないので、強制的に黒子が起用されたが、これはひどい。
引きつった顔で黒子を問い詰めると、開き直った様子。
しかも不貞腐れた、なんだこれ可愛い。

「…いや、私人のこと言えないからね」
「苗字さんさんは運動ダメですっけ」
「ダメダメ。家に帰ることしか考えてないし」

まあ私は黒子以下の運動能力なので、彼を悪くいうことはできない。
ちなみに私の出る競技は玉入れだけだ。
もはや走りすらしない。

「まあ、そうですよね、苗字さんさんは安定していていいですね」
「ねえそれ褒めてる?」
「そういう風に聞こえたなら国語を勉強し直したほうがいいです」
「あはは、だよね。地に落ちろ」

安定してイコール予想を裏切らないだろうな。
ま、見ての通り運動はできないです。
ちなみに私の見た目は重そうな量の多い黒髪と眼鏡です、どうみても文学系です。
髪の毛はちょっと禿げてきた担任に差し上げたいくらい。

今日は運動をするということが分かっていたから、その大量の黒髪をポニーテールにしてきた。
ハタキが頭から生えてるみたいだ。

「しかし、期待を裏切ることになってしまったのは申し訳ないです」
「大丈夫だよ、誰がやってもああなるだろうし」
「そうでしょうか」

うちのクラスで他に足の速い奴なんていただろうか。
まあ文化部でも意外と運動できる奴はいるだろう。
けれどもそんなノーマークを入学してから3か月の間で発見できる奴はそうそういない。
それに、いたとして協力してくれるとも限らない。
うちのクラスはあまり集団行動が得意でないことはこの3か月で理解している唯一のことだ。

だから黒子が責任を感じることなんて、小指の先ほど感じることはない。
真面目な黒子に責任を押し付けた私たちが、むしろ責任を感じるべきなのだ。

「まー気にしない!ほら、黒子、3人抜き達成のご褒美ね」
「…抜きというか、抜かれですけど」
「はいはい、細かいこと気にしなーい!贈呈!」
「ありがとうございます」

持ってきていたデザートのゼリーを頑張ったで賞の黒子に渡した。
暑さのせいで汗をかいたゼリーの水滴に、頬を赤く染めた黒子が映った。



(ゼロカロリーだからね、ヘルシー!)(別に僕はカロリーにこだわるほど太ってないのでどうでもいいです)(それは暗に私がデブと?)(そうはいっていません、別に苗字さんさんだってゼロカロリーに頼る必要はないと思います)(…おお、それはよかった)
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