恋は戦争
さて、彼氏ができたわけで晴れて私もリア充。
まさか、高校に入る前にすでにリア充なんてびっくりだ。
今日は入学式前にテツヤの家で高校生活について考える会を開いている。

「マネージャーはしないってば」
「なんでですか」
「だって面倒くさい。というか運動部のあのテンション、ついていけないし」
「…まあ、確かに名前さんはそういう感じですけど」

こういう時、彼氏が入っている部活の手伝いとかしたくなるものなんだろうか。
お答えください、全国のリア充の女性。
まあ、どんな答えが勝ってきたとしても、私の答えは変わらない。
はっきりNOといえる精神、大切です。

不服そうなテツヤを窘めるように苦笑する。

「ほら、もしかしたら男バスの部員に気に入られて大変なことになるかもしれない」
「確かに。今の話はなしで」
「切り替え早!ねーよ!もっとかわいい子いっぱいいるっしょ」

花の女子高生だぞ?女の子が一番かわいい時期と通称されるときだぞ?
可愛い子なんてわんさかいるだろう。
ちょっと楽しみだ、覚えられないけど。

「ううん、名前さんちゃん可愛いもの。ダメよ、テツヤ。取られないようにしないと!」
「わかってる…母さん、ノックは?」
「え、そこわかっちゃうの?」
「名前さんは自覚がないだけだから」

いつの間にか、テツヤママが扉を開けていた。
わお、ちょっと待って今の話聞かれてた?恥ずかしいんだけど、私自分で自分を可愛いって遠回しに言ったようなもんだぞ?恥ずかしい。

ちなみに、テツヤママにはお付き合いさせてもらっている旨をお伝えしました。
そしたら、あら、ようやくなの?という斜め上の回答を頂きましたと。
その言葉にまたテツヤが不服そうに文句を言いつつ、部屋に向かうというデジャヴ満載の体験をしたのが十数分前。

テツヤママは、しょっちゅうノックを忘れるのでテツヤはご立腹である。
普段はおとなしくて穏やかなイメージだけど、家では結構普通の15歳男児である。
テツヤママからお茶とお菓子(今日はテツヤママのお手製クッキーです。料理上手で羨ましい)を受け取ったテツヤが、扉を閉めた。
鍵を閉めないのは、心遣いだろうか。
やはりそういうちょっとした優しさがテツヤらしい。

「名前さんは人の顔にあまり興味がないからわからないんだろうけど、結構可愛いから。僕、釣り合ってませんから」
「別に顔とか、釣り合うとかどうでもよくない?」
「…僕は名前さんのそういうところが好きです」

この天然タラシめ。
普通に好きとか言われたら恥ずかしいわ、悪い気はしないけどな!
はいはい、と恥ずかしさとともにテツヤの言葉を流す。
ごめんなさい、真正面から受け取れない臆病者で。

「んー、それにしても可愛いとかよくわからないな。女の子はみんな可愛いよ。ふわふわしててさ。キセリョ好きーって煩く騒いでる女子も、こっそり赤司くん…って言ってる女子も可愛い」
「たぶん、それは恋をしている女性の纏う空気がもう可愛いのでは?名前さんは空気で人を見ている節があるから」
「ああ、そうかも」

なるほど、そうかもしれない。
私が可愛いと思うものは、目に見える表面的なものではない。
可愛くなろうとするその努力だとか、一生懸命になっているところだとか。
そういう時に人が纏う鮮やかな、または艶やかな、そういう雰囲気が私は好きで、可愛いと思うのだ。

そう思えば、私がテツヤに惹かれたのも説明がつく。
私はテツヤの試合を見に行ったことはない。
だけど一生懸命になっている時に話を聞いていたし、テツヤが決心した時も傍にいた。
そうやってテツヤの頑張る姿を傍で見てきたから、私にとってテツヤはカッコいい人なのだ。

「うん、大丈夫。私、テツヤ以上にカッコいい人に会ったことないし」
「唐突になんてことを…」

顔を赤くしたテツヤに内心ガッツポーズ。
これで1勝1敗、引き分けである。


(恋は戦争!)(アタックアンドシーク!)

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