05.女子目線で考てみた
体育祭は今年もおさぼり…ならぬ玉入れだけだ。
テツヤは去年の失態を鑑みて、玉転がしと借り物競争に出ていた。
私は順番を待つテツヤをぼんやり眼で追っていた。

「そういえば、名前さんって黒子と仲良いよね」
「まあねー、1年の時から一緒だし」

隣の美緒&美香子は私と同じ玉入れ組。
午前中の競技には出ないという、やる気のない女子代表だ。
のんべんだらりとグミを口にいれたり、お茶を飲んだり。
体育祭の象徴、ハチマキは首から下げられたり、可愛らしく頭でリボン結びにされたり、ポニーテールのリボンになっていたり。
美緒に至っては日傘をさしていて、その姿は保護者に近い。

「いやいや、でも仲良すぎっしょ。付き合ってんの?」
「いやあ、そういうんじゃないよ」
「まあ、黒子じゃ名前さんには釣り合わないわ」

まあ女子同士だとこうなりますわな。
私にとって、テツヤはいい友達だ。
一緒にいて楽だし、意外性があって面白い。
それに、彼の周りの人も見ている分には面白い、仲よくはなりたくないけど。

美香子が釣り合わない、とそういったのは意外だった。
私はそうでもないと思うのだが。
顔の問題だろうか、私はそのあたりの事情に疎い。

「私と釣り合うってどのレベルなの?」
「許さないけどキセリョ」
「え、嘘」
「嘘じゃないから。腹立つわー」

OH,なんてことだ。
私外から見るとそんな風に見えていたのか。
というか美香子さんや、君この前私なんて敵じゃないとか何とか言ってたじゃん。

まあ、確かに思い当たる節はある。
兄の一人は俳優で、演技力がすごいといわれているがそれ以前に顔がいいらしい。
母から言わせれば、私はその俳優の兄と顔立ちが似ているとか。
もう1人の兄もそこそこイケメンと、自分の息子を評価していたのでうちは結構美形を輩出している家といえる…のだろう。
私は今までそれを母の身内自慢的なものだと思っていたから、何とも言えなかったが。

「あんた、自分の顔の識別もできてないの?」
「できないよ。だから人に言われないと可愛いとかよくわからんのよ」
「ま、自分の顔なんて直接見られるの、他人だけだから気にすることないっしょ」

美香子たちは私の性質に関しての理解があるから本当に嬉しい。
口は悪いが、性格はいいし。

私はありがとうとだけ返して、お茶を飲んだ。
ふとグラウンドをみると、テツヤが走っていた。
借り物競争は借り物の書いてある紙のところまでは50m走と変わらない。
しかし、リレーや100m走と違って借り物競争を選ぶのは運動部よりも文化部のほうが多い。
だから、テツヤはトップから2番目位を走っていた。

「あれ、黒子結構早くね?」
「いやいや、一応テツヤはバスケ部レギュラーだし」
「え、マジ?知らなかったわ」
「薄いからなー黒子」

散々な言われようだ。
まあ確かに薄いから練習していても、他のレギュラーに忘れられるといっていたっけ。
青峰でさえ、テツヤを見つけられないとか。
そう考えると不憫なキャラクター。

しみじみとそう思いながら、テツヤの動向を見守る。
彼は2番手で借り物の書かれた紙を取った。
そしてそれを開いて、あたりを見まわす。

「あれ、なんかテツヤこっちに来てる?」
「げ。…借り物何だろ」
「人とかだったらやだわ、走りたくねー」
「確かに」

テツヤがこちらに来るというと、2人は少々アタフタした。
というもの、本来であれば先生に怒られるようなことをしているからだ。
応援席は基本的に食べ物はダメ、ハチマキは額にというルールもある。
日傘で隠れているからいいものの、周囲の視線がこちらに向くと厄介だと2人は考えているらしい。

慌てて食べ物を隠す私たちのもとに、テツヤはやってきた。

「テツヤ、誰の何が借り物なの?」
「日傘です。村山さんのもの、お借りしても?」
「え!?ああ、はい、どうぞ」

どうやら借り物は日傘だったらしい。
競技が終わったらすぐ返します、とだけ言ってテツヤはグラウンドに戻っていった。

「日傘って。保護者から借りたら返すの大変そう」
「いや、いやいや!いつ黒子来たよ!?」

テツヤは一番手に借り物の紙を取った人よりも早くゴールした。
一等賞だ、珍しい。

美香子の声に私は苦笑した。
彼女たちにはテツヤの姿が見えていなかったらしい。
一度眼を離せばすぐに消える、スネークも真っ青なスケルトン。


(うっわ…こうしてみると黒子すごいな)(そうでしょ?テツヤってば結構すごいんだって)(いや、黒子が見えるアンタがすごいわ)
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