01.ステルス系男子
中学2年にもなると、まあ女は色付くもので。
個人差はあるにしろ、色恋沙汰の話が増えてくる。
ここで困るのが私である。

「で、名前さんの趣味ってどんななの?何系?」
「…さあ?」
「さあって。えー誰が好きとかないの?」

いや本気で特にない。
というか、問題は顔じゃないだろ、中身だ、中身。
お前らたい焼きだと思って食べたら中身がタコだったら引くだろ。
まあそれはさすがに例えが悪すぎるので、またいい例えも浮かばなかったので何も言わないでおいた。

黙々と菓子パンを食べる私の代わりに、1年のころから一緒にいる子が言う。

「あーないない。名前さんは無理だって。こいつまだクラスの男子の顔と名前一致してない」

ケラケラと笑いながら、そういうと周りの子が、は?みたいな顔をする。
いちいちこの説明を入れるのも疲れた。
2年になってすでに2か月、梅雨が明けて暑くなり始めたころだ。
まあ、普通の人ならクラスの人の顔と名前をすべて一致させていることだろう。

ちなみに、ここで一緒に食事を摂っている女子の半数以上の顔と名前が一致していないことは秘密である。
ばれたら罵詈雑言を圧縮してドロドロにしたものを、知らないうちに背後からべったりと塗り付けられることになるだろう。

「うっわ、ないわ」
「といいましても、私あんまり男子と話さないし。敵が減っていいじゃん?」
「名前さんなんて敵にもならんわ、阿保か」

デスヨネー。
薄らと化粧をして、髪を巻いて、短くしたスカートから眩しい生足を惜しげなく見せている可愛い女子にかなうわけありませんわ。
むしろ私が惚れるわ。

私は黙々と味気ない焼きそばパンを飲み込んだ。

「そんでさ、キセリョ、やばくね?」
「やばいっしょ、それは。イケメン過ぎて吐くわ」
「眩しくて目が瞑れる」
「確かにー!」

キセリョ、とは隣のクラスのモデルらしい。
黄瀬涼太がフルネームで、名前からして爽やかさ全開。
私も何度か見たことがある、あれだ纏う空気が違う。

顔は例に漏れず覚えていないけど、すれ違うとわかる。
空気で覚えた、こいつは黄瀬涼太、と。
私は顔が覚えられない代わりに、そういう有名人には敏感だ。
纏うオーラでなんとなく、すごい人を察知できる。
そして大抵、そのすごい人はイコールやばい人だ。
知り合うと何かしらのイベントが起きてしまい、面倒事に巻き込まれる。

というわけで、極力そういうやつらは避けて通っている。

「そういえば、キセリョってバスケ部入ったらしいよ!」
「は、それやばくね?鼻血もんでしょ」
「脇!バスケ部のユニフォームって脇見える!最強!」
「おま、変質者か!」

そうそう、バスケ部といえば、テツヤ。
彼はあの華奢な身体でレギュラーになったらしい。
あれだけ薄いんだからキセリョなんて入ってきたら余計に薄くなるんだろうなと思う。


(最近、黒子がどれだけ薄くなるのかに夢中です)(あれが傍にいる他人にも効力閉めしたらかっこいい)(あれだ、ステルス迷彩!かっこいい!)
prev next bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -