夏服ともそろそろおさらばしたいところだが、気温がそうはさせてくれない。
「夏服飽きた!」
「といいましても」
「ここって冬服のほうが可愛いよね」
「上着があるないの差しかないじゃないですか」
そうなのである。
帝光中学は私立だというのに、制服はだいぶ着回しが多い。
青のYシャツと白のスカート。
冬はYシャツが長袖になり、その上に白ブレザーがつくくらいの差しかない。
母は、お金がかからなくていいわ、といっていた。
それは確かにある。
白いブレザーはこの辺りでは珍しく、なんとなくかわいい感じがする。
まだ制服に着られてる感があるが、そのうち似合うようになるのだろう。
「テツヤも冬服のほうが似合うよ」
「そうですか?」
「うん、肌が白いから白い服のほうが青より似合う」
テツヤは女子が妬むくらい色が白い。
だから青のシャツを着ると、ちょっと顔色が悪く見える気がする。
…いや、今はちょっと顔色も悪いのかもしれない。
いつからだろう、夏休みが終わったばかりのころは元気だったと思う。
10月のはじめも元気だった、たぶん今週に入ってから元気がなくなった。
何かあったのだろうけど、聞く勇気はない。
「11月になったらさ、焼き芋屋さんくるかなあ」
「食べることばかりですね」
「読書の秋も忘れてないよ!この前読んだポーの黒猫、面白かった」
「そうですか」
季節は秋、夏の疲れが出てくる時期なのかもしれない。
ちょっとテツヤは疲れ気味みたいだ。
本をお勧めして、少しでも身体を休めてほしい。
バスケ部はとても忙しいみたいだから。
「そういえば、図書室の新しい本って入った?」
「まだですよ。来月です」
来月か、まだ10月は半分以上残っているのに。
長いなあと思う。
夏休みがとても楽しかったから、早く冬休みになってほしい。
冬休みになればお年玉ももらえるし、雪も降るかもしれない。
誕生日が近づくし、楽しいことがいっぱいだ。
「そういえば、テツヤの誕生日っていつ?」
「1月30日ですよ」
突然なんですか、って言われなかった。
本当に疲れているみたいだ。
「そっか!じゃあお祝いしなきゃね!」
「まだ随分と先ですよ…」
呆れたように、テツヤはそういった。
その時にちょっとだけ笑った、ようやく笑った。
早く元気になあれ、という意味も込めて、私の元気の良さは3割増しだ。
ただテツヤにはなかなか届かないけど。
でも、それでも私は元気でいるのだ。
なんせ私は元気なのだから。
(私の誕生日は3倍返しでね!)(…いつですか?)(2月!)(また、随分と先の話ですね)(きっとあっという間だよ!)