25.EXPENSIVE PICTURE
私は絵画に一礼してから、その場を離れた。
ルイス先輩が無言でその後に続く。

動く階段に乗り込んだ辺りで、ルイス先輩がようやく口を開いた。

「お前マジで何者なんだよ…レストレンジの絵画があんなに親切とかありえねえわ」
「私っていうか、パパなんですって。なんか知らないけど、パパのことをスリザリンの人はみんな知ってるんですよ」

ティエランドロさんが最後に行った、身内を悲しませるな、というのは恐らくパパのことだ。
…というか、以前、ティエランドロさんは彼の子か、といった。
ティエランドロさんは学生時代のパパを知っているということだ。
いつ、知ったんだろう。

その時、がたんと乱暴に階段が動いたので、思考がとまった。
手すりにつかまりながら、下の方を見ると、何か慌ただしく人が動いていた。
その中で、セドリック先輩のはちみつ色の髪が揺れている。

私がセドリック先輩を見つけたのとほぼ同時に、彼も私たちを見つけたらしい。
早足で他の生徒の間を縫ってこちらに駆け寄ってくる。

「ルイス!ななしさん!」
「セド、なんかあったのか?」
「…ななしさんは部屋に戻って。ルイスはこっち」

大慌てな様子のセドリック先輩がルイス先輩の腕を引いて、人の多い階段をかき分けて進む。
強引に引っ張られたルイス先輩が私の腕を乱暴につかみ、一緒に連れまわされている。
迷惑そうな視線を感じながらも寮に戻った瞬間、ルイス先輩だけ談話室の奥に連れ込まれ、私は部屋に戻るように、と女子寮に繋がる階段に押し込まれた。

いったい何だったんだろう、と思いながらも部屋に戻ると、蒼白な顔をしたミーニャを慰めるハンナと目が合った。

「ななしさん!」
「え、何があったの?」
「…それが、ジャスティンが…」

ハンナも困り顔で、どうしたものかと口をまごつかせている。
私が首を傾げていると、背後からやってきたらしいスーザンが苛立たし気に答えた。

「石にされたの、だから大騒ぎよ。見つけたのはポッターですって」

その瞬間、ミーニャの肩が震えたのが良く見えた。
呆然としている私を部屋の中に押しやって、部屋のドアを閉めたスーザンは乱暴にベッドに身を投げた。
どうやらストレスをため込んでいるようだ、理由は定かでないけれど。

それにしても、とうとう人間の犠牲者が出た、しかもハッフルパフから。
怯えるのは当たり前のことだ、次は我が身。
そこまで考えて、はっとして自分のベッドに戻った。
念のため、ベッドサイドの引き出しの一番下を開けるためだ。

黒いゲージをちらと開けると、赤い瞳がこちらを見た。
最近蛇の印象が悪いからちょっと心配だ、もちろん、ヤタに人を石にする力なんてないけど。

「ななしさんは何してたの?」
「ちょっと調べもの。ルイス先輩と一緒だったんだけど、談話室で別れたよ」
「高学年は大騒ぎよ、詳しいことは教えてもらえないけど」
「詳しくないことは教えてもらえたの?スーザン?」
「まあね」

先ほどのいら立ちとは一変して、スーザンはクスクスと笑い出した。
どうやら気付いて聞いて欲しかったようだ。
ハンナが咎めるように私たちを見たが、スーザンは気にしていないようだった。

流石に私は気になったので、スーザンのベッドに移動した。
ハンナとミーニャはその真反対のベッドにいるから、まあ小声で話せば聞こえないだろう。

「襲われたのはジャスティンだけじゃないの。首なしニックも一緒だったらしいわ」
「は、首なしニック?彼、ゴーストでしょ」
「そう、ゴーストよ。どうやら停止した状態でぷかぷか浮いてたみたい。何も言わないし、動かない…石にされているのと同じような感じだったって」

なんだそりゃ。
首なしニックはグリフィンドールにいる、首の皮一枚つながったゴーストだ。
今まで生きた動物(そんな言い方したらジャスティンに悪いけど)しか襲われてこなかったというのに、ゴーストまで。

こうなってくると、いよいよ人の犯行ではなさそうだ。
少なくとも、攻撃してきているのは間違いなく別の何かだと思う。
ゴーストや猫を襲う辺り、直接行動している奴は人間と動物を識別していない。
問題はその行動している奴に命令をしている人がいる可能性があるということだけど。

「それにしても、どうやってゴーストを固まらせるの?」
「そんなの分からないわよ」

そりゃそうだ。
ゴーストはそもそも死んでるし、二度目の死はないはず…いや、石にされただけで死んでないんだけど。
ペトリフィカスみたいな石化魔法の能力の強化版のようなものだろうか。
もともと石化魔法がゴーストに聞くのかは謎だけど。

よく分からないことだらけだ。
ある程度スーザンから話が聞けたので、私は自分のベッドに戻った。
戻って今あったことをノートにまとめた。
とりあえず、分からないことはパパに聞いてみよう。
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