23.DUEL
私もあまり参加するつもりはなかったが、近くに来たロックハートに連れられて、知らないスリザリン生と組まされた。
ダフネ・グリーングラスという同い年の子だ。
柔らかそうなダークブロンドをハーフアップにしている可愛い子で、やる気はそんなになさそうだ。

「ねえ、もしかしてあなたも連れてこられただけ?」
「あー、あなたも?」
「そう。本当に下らないわ…スネイプ先生の武装解除が見られたのはラッキーだったと思うけど…カッコよかったわよね、スネイプ先生!」
「そうだね。ほんとスネイプ先生が闇に対する防衛術の先生でいいんじゃないかな」

どうやら運よく連れてこられた者同士で組むことができたらしい。
ダフネはスリザリン生だが、意外にも友好的で普通に話が弾んだ。
どうやら、スネイプ先生がお気に入りらしい。

決闘中も決闘らしいことは何もせず、おしゃべりをしていた。
といっても、もっぱらダフネと話すばかりだが。
そういえば、スリザリンの女子ってスピカ先輩以外とはあまり話したことがなかったのを思い出した。

「ななしさんってスピカ先輩と仲がいいんでしょ?」
「うん、そう…あれ、名乗ったっけ?」
「ううん、でもあなた、スリザリンじゃ有名よ。ブラック家とも仲が良くて、ドラコすら口出しできないくらいい家なのにハッフルパフなんだって」

それはなんともとんでもない噂が流れているものだ。
確かに私の苗字はマグル生まれのママの苗字だから、有名じゃないのは当たり前だ。
というか、純血じゃないし。
だからほとんど、パパの七光りでこうなったのだけど、とてもじゃないがそれを言うつもりにはならない。

ところで、私たちが話している…特にダフネの後ろでスリザリンのネクタイをした背の高い女の子が、ハーマイオニーに殴りかかっているのは、見間違いだろうか。
私とダフネの周りだけは和やかだが、周りは見るに耐えない惨事になっている。

「うわあ…」
「ちょっと、ミリセント。あなた何やってるの?そんな野蛮なことしないでちょうだい」
「だってさあ、ダフネ。この穢れた血、むかつくのよ」
「あなたって本当に…まあいいけど、それくらいにしなさいよ、本当にみっともないわ」

ダフネが声を掛けるとミリセントはハーマイオニーの上からどいて、ついでに引きはがそうとしていたハリーも一緒に突き飛ばした。
改めてみると、本当に身体の大きな女の子だ。

周囲の惨事を収めるためにワアワアしているロックハートを無視して、スネイプ先生が代表の生徒にやらせようと勝手に話を進めていた。
混乱を収めるのに手いっぱいなロックハートはそれを適当に承諾した。
まあスネイプ先生の言う通り、代表制にした方がよさそうだ、この状況を見る限りでは。

ただ、スネイプ先生の生徒のチョイスに悪意を感じる。
選ばれたのは、ハリーとドラコだ…悪意しか感じない。

「ななしさん、どっちが勝つと思う?」
「うーん…どっちもどっちじゃない?」
「絶対ドラコよ!」
「どうかしらね…ドラコって本番に弱いって聞くわ」
「どこ情報なの、それ…」

先ほどのペアリングのせいで、ハンナたちとはぐれてしまったので、必然とダフネたちと一緒にいることになった。
私が2人と話しているのを、ハーマイオニーが怪訝そうに眺めている。
スリザリン生と仲良くしているのが気に食わないのか、…いやまあ、自分をマウンティングした女の子と仲良くお喋りしてるんだから、そりゃ気に食うわけがない。
ちくちくとした視線を感じながら、壇上を見上げた。

ドラコとハリーの決闘ということだが、まあ、どっちが勝ってもおかしくはないと思う。
あまり両者の戦いに興味はない。
ワイワイと話を続けるダフネとミリセントの声を聞きながら、ハッフルパフの友人たちの姿を探した。
早いところ合流して、帰るときに探す手間を省きたい。

「ななしさん…ななしさん…!」
「あ、ジャスティン」

きょろきょろしていると、壇上により近いところでジャスティンが小さく手を振っていた。
私はダフネとミリセントからこっそりと離れて(ついでにハーマイオニーにごめんね、とジェスチャーをしておいた)、ジャスティンの傍に向かった。
ジャスティンの傍には、マクミランが一緒にいる。

壇上で始まった戦いに夢中な生徒たちをかき分けて、2人の傍に立った。

「ななしさん、大丈夫だったか?」
「平気。決闘してないし」
「ななしさんがスリザリン生と組まされているのを見て、ひやひやしましたよ…」
「まあ、ロックハート先生の考慮のなさにはがっかりだけど」

ジャスティンが苦笑いして、そういう時もありますよ、とロックハートを弁護した。
ロックハートにはそういう時しかないから当てにならないのだけど、黙っておいた。
私とジャスティンはあまり壇上を見ていなかった。
ハリーたちの決闘についてあまり興味がなかったからだ。

マクミランに腕を引かれて、ようやく私たちはお喋りをやめた。

「じっとしてろ…、」
「何…?」
「蛇だ」
「えっ、うっわ…」

私とジャスティンの目の前に黒い大蛇が鎌首をもたげて威嚇音を立てていた。
その威嚇音は明らかに不機嫌なことこの上ないもので、今にもとびかかってきそうだ。
蛇は見慣れているとはいえ、明らかな敵意を持った子にはあまり会わないから対処法は分からない。

ジャスティンは完全におびえて硬直してしまっている。
こういう時、下手に動くといきなり攻撃されることがある。
だから徐々に下がるのがいいだろう。

「やめろ、下がれ!」
「ん?」

シューと蛇の鳴き声のような音に混ざって、確かに言葉が聞こえた。
しかもその言葉を蛇も聞いたらしく、下がった。
きょとんとその黒蛇を見ていたが、その蛇はスネイプ先生によって消された。
…ちゃんと元の住処に戻ってるといいんだけど、蛇。

怯えたように私のローブの裾を握っているジャスティンを連れて、私はマクミランの方に寄った。
マクミランは睨むようにハリーを見ていた。
周囲を見渡すと、殆どの人がハリーを睨む、もしくは恐怖の眼差しで見ていた。

「何ふざけてるんだ?」
「何が?」
「ななしさんだって聞いてただろ?ハリーが、蛇をけしかけたのを!」
「え、何それ」

胡散臭そうにジャスティンを見たが、彼も同じ意見らしい。
曰く、蛇のような鳴き声をハリーがしたところ、蛇がジャスティンの方を睨んだとのこと。
いやそれは違うだろうと思ったが、ジャスティンとマクミランが一方的に話すので何も言えなかった。

もしあの、蛇の鳴き声に混ざって聞こえた声が、ハリーのものだとしたら、これは冤罪だ。
ただこの場でハリーに真偽を問う勇気はないので、何も言わずに、大広間をロンとハーマイオニーに連れられて出ていくハリーの後姿を見ているばかりだった。

prev next bkm
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -