10.REUNION
週末までの授業はまあ、色々だ。
特筆すべきはやはり、闇に対する防衛術の授業だろう。
あんなに役に立たない授業は初めてだった。

初回授業から抜き打ちテスト、内容はロックハートについてのものばかり。
一応、教科書という名の自伝書を読めばわかるようになっていたようだが、一体あの本を読むことにどんな意味があるのか知れたものではない。
流石に腹が立ったので、パパに愚痴がてら手紙を送った。
ただ、木曜日も金曜日も授業がたくさん入っていて忙しかったから、送ったのは金曜日の午後になってしまった。
手紙を送って談話室に戻ると、窓の前のソファーでセドリック先輩とルイス先輩が座っていた。

「まあ…何というか、悪い人ではないんだろうけど」
「そうだな、悪い教師ではないな」
「いやそういう意味じゃ…」
「確かにあの人、教師だって認めたくない…」

ルイス先輩が手招きをするのでそこに行ってみると、いきなりロックハートの愚痴が始まった。
あの人、と濁しているものの、その相手がロックハートなのは分かりきっている。

テーブルには、「鬼婆とオツな休暇」「トロールのとろい旅」、それからマグカップが2つ置かれている。
どうやら2人とも何か課題をやっているらしかった。

「来のOWLはどうなるんだろう…」
「逆に簡単になるかもしれないですね」
「勉強にはならないだろうけどな」

ルイス先輩は相変わらず辛辣だが、彼の言うことは正しいような気がする。
今年だけは、あの忌まわしい“闇に対する防衛術の先生は1年しか持たない”というホグワーツのジンクスをフルに活用してほしいと思う。
セドリック先輩が苦笑いをしながら、まあそれは流石に…といっていたが、少し楽観的過ぎるような気もする。

私はセドリック先輩が杖を振って出してくれたマグカップの中に入っていたココアを飲みながら、「鬼婆とオツな休暇」を手に取った。
実はロックハートの本を私はほとんど読んでいない。
一応目を通したが、あまりに下らなかったのでその後読んでいないのだ。
もう一度パラパラとめくってみたが、やっぱり内容はくだらなさそうで、文章一つとっても読みにくいったらありゃしないのですぐ閉じた。

「お二人とも、闇に対する防衛術の2年生の教科書ってまだ残ってます?」
「ああ…今は家だけど、まだ残してるよ。もし使うのならどうぞ」
「お願いします」
「ななしさんは真面目だしなあ…あの授業は受けつけないだろ」
「まあ…そうですね」

別に勉強が好きなわけではないが、あの下らない話を聞いているくらいなら、去年の闇に対する防衛術の教科書でも読んでいた方がましだ。
一応同じ教科なんだし、多少は大目に見てくれる…と思う。

セドリック先輩に去年の教科書を頼んで、ついでにルイス先輩に去年読んで面白かった本をいくらか教えてもらった。
勤勉なのはセドリック先輩だけではない、ルイス先輩もそうだ。
私は2人に礼を言って、午後の暇な時間に早速ルイス先輩に教えてもらった本を借りに行こうと寮を出た。


図書室はまだ人が少ない。
まだ課題も多くない今、図書室に来る人はただ単に本が好きか、急を要する調べ物がある人くらいだ。
落ち着いた様子で本を整理しているマダム・ピンズの隣を抜けて、闇に対する防衛術の参考文献が置いてある棚に一直線。

闇に対する防衛術の本を借りようとしていた生徒は私だけではなかったようで、いくらかの本は借りられていた。
ただ人気はない…小さな赤毛の少女と金髪の少女が座っている以外は。

「…あ、あの時のお姉さん」
「ん?」
「フローリッシュ・アンド・ブロッツで会いました。おばさまを連れてきてくださってありがとうございました」

背の低さから言って、1年生だろう。
ネクタイはグリフィンドールとレイブンクロー…珍しい組み合わせだ。
ただこの2人どこかで見たことがあるなとは思っていた。
思い出せずにいると、金髪の少女の方が声を掛けてきてくれた。

夏のフローリッシュ・アンド・ブロッツでのことを思い出して、あ、と間抜けな声を出してしまった。
そう、あの時に迷子になっていた少年少女の、少女の方だ。
あの時は長く濃い金髪を下していたが、今は軽く結い上げている。
首にはレイブンクローのネクタイ、セオドールが言っていた、クラウチ家は大抵、スリザリンかレイブンクローだと。

「シャルロッテ・バーティミウス・クラウチです。お話はセオドール兄さんから聞いてます」
「よろしくね、シャルロッテ。私のことはななしさんでいいから」
「はい、よろしくお願いします、ななしさん先輩…ところで、少しお聞きしてもいいですか?」
「え、うん」

わざわざ椅子から立って、スカートの端を軽くつまんで持ち上げて見せる様は、育ちの良さが際立っているとしか言いようがない。
手慣れた様子で椅子を引いて私を隣に座らせた。
あれ、私何しに来たんだっけ。

「紹介が遅れました、こちらはジニー・ウィーズリーです」
「ああ…うん、知ってる。ロンの妹さんだ」
「初めまして…ええと、ななしさんさんでいいですか?」
「うん。よろしくね、ジニー」
「この手帳を見てください…私たち、これについて調べているんです」

隣に座っていた赤毛の少女は見覚えがある。
こちらもフローリッシュ・アンド・ブロッツで見た…ウィーズリー一家の末娘だ。
そばかすの散った頬は少し色が悪いような気がする。
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