38.MONIRORING EYE
次の日、スリザリン寮とグリフィンドール領の点がガクッと落ちていた。
特にひどかったのはグリフィンドール…200点も落ちていたのだ。
これにはハッフルパフ生は驚き、その上で喜んだ。

「これなら抜けるかも」
「ビリから脱出できるぞ!」

なんとも健気な話だ、ちょっと情けないけれど。
私は点数の減り具合から、あれがポッターの罠でなかったこと、ドラコは忠告を聞かず外に出ていったことが分かった。
ドラゴンは確かにちょっと気になるけど、危険を冒してまで見に行くものじゃないだろうに。

…嘘、私もちょっと見たかったな、ドラゴン。

「で、ドラゴンは見られた?」
「その前にマグコナガルに捕まったんだと」
「あー、そりゃ残念。それにしてもやるね、ハリー。ノルウェー・リッジバックって凶暴種でしょ。あれをばれずに運び出したのなら、すごい」

私はティエランドロさんに会って話を聞くべく、スリザリン寮に向かっていた。
ただ、その前に当の本人とザビニ、セオドール、アルの4人組に会った。
どうやら4人はスネイプ先生のもとから帰ってきて、これから図書室に行くらしかった。
皆一様に薬品のにおいがした。

聞けば、セオドールとアルはもともとスネイプ先生に質問しに行っていて、そこにドラコと(ドラコをからかうために)ついてきたザビニと合流したらしい。
1年生が4人も、しかも問題児と煩いのまで来られてはさすがのスネイプ先生も堪らなかったのだろうなと想像できた。
それで、一番気になっていることをドラコに聞くと、ひどく不機嫌そうに顔をそむけた。
それを見たザビニがおかしそうに答える。

「生まれたてだったからな」
「ふうん。赤ちゃんのドラゴンかあ…どんななんだろ。…そう言えばドラゴンって爬虫類に分類されるの?」
「分類するならおそらくは。ただ魔法界ではそういう分類、あまりしない」
「そっか。じゃあ蛇に手足羽が生えたようなもんか。種類によってはペットとか…」
「違法だっての」

ヤタがちょっと太って手足が生えて羽が生えたら、ドラゴンみたいなものかもしれない。
あのぐーたらなヤタがドラゴンになっている姿を想像したらちょっと笑えた。
あんなぐーたらなドラゴン、かっこ悪いことだろう。

「ってか女子で爬虫類とかドラゴンとかに興味もつの珍しいな」
「いやだって、私のペット蛇だし。2mくらいの」
「…まじかよ、スリザリン生でもそんなペット飼ってる奴いねーぞ」
「?うち、2匹いるけど…あれ、うちが変なの?」

そりゃ、一般的なマグルの家ではありえないと思う。
だけど魔法界の、純血の家ならあり得るんじゃないかと思っていたのだが違うらしい。
ザビニとドラコはちょっと引いている、セオドールとアルは気にしていないようだった。
むしろセオドールなんて、今度鱗や牙が欲しいとまで言い出した。
どうやら魔法薬で使いたいらしい、でも剥いだら絶対怒るからなあ。

「ナギニなら許してくれるかな?パパに頼んでみるよ」
「お前の蛇?」
「ううん、ナギニはパパの。私の子はヤタっていうんだけど…グータラ寝てるばっかりだよ。まあ今は冬場だからしょうがないけど。寝てる間に剥いちゃうかなあ…」
「…もしかしてお前、学校に持ってきてるのか、蛇」
「うん。まあ殆どゲージから動かないし、同室の子には一応言ってあるけど忘れてるんじゃないかな。夏場は保冷剤として連れまわしてるけど、学校は休みだしね」

ヤタは学校に来てからというものの、殆どゲージから出ない。
半月に1度、食事もかねて丸々1日禁じられた森に放しているが、問題が起こったこともない。
ぐーたらだが賢いから人には近づかないし、適当に放しても絶対に元の場所に戻ってくる。
私の部屋も覚えているようで、私が迎えに行かない時は自力で部屋まで戻ってくる。
…ただ、自力で戻ってくると汚れがひどいので(どこを通ってきているのか考えたくもない)迎え位に行くようにしているけど。

「ななしさん、ヤタにあってみたい」
「正気か、アル…2mって相当だぞ…ニシキヘビとかそういうレベル…」
「あ、今はパパが不便だからって半分くらいの大きさにしてくれてるよ」
「それでも1mだろうが…」

意外なことに、アルが目を輝かせていた。
曰く、そんな大きな蛇を見るのは初めてなんだとか。
その上で、動物大好きという意外な一面を聞いた。
とりあえず、アルには今度見せると約束して4人と別れた。

スリザリン寮の前は相変わらず人がいない。
ティエランドロさんは、静かに椅子に腰かけ、本を手にしていた。
私が近寄ると、ふっと顔を上げた。

『ああ、こんにちは、ななしさん』
「こんにちは。ドラコのこと、聞きましたか?」
『聞いたとも。昨晩も私が声をかけたのだがね、まったく聞かなかった。困ったものだね』

ティエランドロさんは苦笑を零しながら、そういった。
まあ若者にはよくある話だといわんばかりだった。

『世間話がてら、彼の父には話しておいた。罰則でも何でも受けさせればいいといっていたよ…今回の罰則は、かなり重いようだがね』
「どんな罰則なんですか?」
『禁じられた森に入って瀕死のユニコーンを探すそうだ』

それはまあ、軽くトラウマになりそうな罰則だ。
禁じられた森自体危険といわれて立入禁止なのに、そこで死にかけた動物を探すなんてホラーすぎる。

『ああ、これはドラコには秘密だ。まだ彼は罰則の内容を知らないからね』
「どこからその情報を?」
『いいか、ななしさん。絵画のネットワークを甘く見ないことだ。彼らは校内のどこにでもいるし、どこへでも行けるのだからね』

絵画を甘く見てはいけない、心に刻んでおくとしよう。
確かに校内には至ることろに絵画の額縁がある。
絵画たちがどのようにして絵画と絵画を行き来しているのかのシステムは分からないが、だからこそ恐ろしい。
壁に耳あり障子に目ありというが、それに近い。

私はティエランドロさんに挨拶をして、その場を去った。
とりあえず、私は悪いことしないようにしようと思いながら。
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