5.粘着系カップル
最近の子どもは戦争を知らない。
辛うじて、イタチの世代が知っているかどうかといったところだ。
私の知らないうちに、子ども達は平和に慣れのびのびと自由に育っている。
私はそれが羨ましく、少し疎ましい。

彼らが生まれた年に、戦争は終結を迎えた。
私はその年にイタチと初めて会い、その縁からこの木の葉で育つこととなった。
彼らは知らない、痛ましい戦争の末に死んでいった子ども達のことを。

とはいえ、そんな話を彼らにすることはない。
今の私は彼らと同い年になっているのだから。

「おっ、名無しじゃんか。懐かしいなぁその姿」
「…アスマさん、こんにちは」

なんとなく少年達についていけなかった私は、1人人気のない場所で食事を摂っていた。

先日、イタチは何が楽しいのか成人姿の私を好き勝手した挙句、次の日13歳の姿の私まで襲うという暴挙に出た。
無論、体力のない13歳になっている私は途中でギブアップ。
ようやく冷静になったイタチがお詫びと言わんばかりに、身の回りのことをほぼすべて完璧にこなしてくれた。
その介抱もあってか、まだ腰痛に悩まされているものの仕事に差し支えのない程度まで回復した。

今日のお弁当もイタチ作である、あれはいい主夫になれる。

それはさておき、食事を摂っているとアスマが茶化しに来た。
担当上忍が来る時間には幾分か早いというのに、なんだというのか。

「おお、ちゃんとやってるなぁ、偉い偉い」
「…話しかけないで。ボロが出そうよ」
「この辺りは誰もいねーよ。お前1人で飯なんて食うなよ。こういう時にコミュニケーション取るべきだろ」

馬鹿にしたようにアスマが茶化すので、口調も元に戻した。
一応、アスマはこれから担当ではないにしろ先生に値する人なので敬語を使うつもりなのだが、相手が私を普段の私として扱ってくる。
しかも、仕事にダメだし。
少なくとも私の仕事は潜伏護衛であって、彼らと仲良くすることではない。

小さくため息をついて、そっとアスマを睨む。
こちらは静かに食事をしたいのだ。

「おお、怖い怖い。まあ、頑張れよ」
「言われなくてもそうするつもり」

アスマはそれだけ言って、どこかへ行ってしまった。
本当にそれだけだったらしい。

私は昼食を食べ終え、指定されていた教室に向かった。
すでにそこにはナルト、サスケ、サクラの3人が揃っていた。
他の生徒もちらほらいるものの、説明会のときよりも数が少ないのをみると、もう何名かの担当上忍がきたのだろう。
しかし、私の所属する班の担当上忍、はたけカカシは遅刻癖で有名。
特別上忍の中でもその噂が流れるくらいには有名である。
なので、どうせ早くになどこないだろうと高をくくって、少し遅めに教室に来た。

「あ、名無しちゃん!遅かったね」
「うん、ちょっと迷ってた…まだ先生きてなかったんだ、よかった」
「え!ごめんね、一緒に居ればよかったかな…」

サクラの近くまでいくと隣を空けてくれたので、そこに座った。
別に迷ったわけではないが、適当に言い訳をつけておいた。
13歳の私は、病弱でずっと入院していたという設定なので、大人しく物静かな女の子を演じればいい。
サクラは元々面倒見がいいほうなのだろう、甲斐甲斐しく世話をしてくれる。

サクラの前に座るサスケ、ナルトは特に何をするわけでもない。
サスケに限っては全く私に興味を示さない、別にどうでもいいが。

結局遅刻魔のカカシが来たのは、時間を1時間も過ぎた頃だった。
全くついていけないサクラと話続けた1時間は相当苦痛だった。
挙句、ナルトがブービートラップを用意し、それにカカシが引っかかるという茶番つき。

「えーっと、じゃあ自己紹介でもしようか。俺ははたけカカシ」

場所を教室から見晴らしのいい屋上に変えて、自己紹介が始まった。
カカシは掴みどころのないキャラクターを演じているのか、自分から好きなもの嫌いなものを言えといったにもかかわらず、自分のことは何一つ教えなかった。
ナルトやサスケ、サクラは素直で、自分達のことをしっかりと紹介していた。
イタチの小さい頃とサスケが似通っていて、少し笑いそうになった。

最後に、私の番が回ってきた。
今までアカデミーにいなかった謎の少女の自己紹介は、確かに気になるだろう。
若干カカシの視線が痛かった。

「さん名無しです。最近まで病気で入院していたけれど、勉強はきちんと病院でしてたし、最近はリハビリの変わりに授業と同じような訓練を受けてたのでどうにか下忍になれました。足を引っ張らないように頑張りたいです。好きなものは甘いもの、嫌いなものは辛いものです。趣味はゆっくりすること。よろしくお願いします」

当たり障りのないことを言ったため、特に何かあるわけでもなく、その場は終わった。
明日、下忍のテストをするという旨をたっぷりの脅しとともに伝えられ、各々帰っていった。
朝食は抜いたほうがいいとか何とか言っていたが、イタチは明日も仕事がないので恐らく私は朝食を摂ってから行くことになるだろう。

「おかえり、名無しさん」
「…ただいま」

家に帰ると既にイタチが夕食を作り始めていた。
それは全く構わないが、イタチが家に帰らないのはまずい。
ここのところ、5日ほど我が家に泊まりっきりで、仕事に行くのもここから。
よろしくない、誠によろしくない。
帰れといいたいところだが、夕食を作られると結局一緒に食べる羽目になって、そのままお泊り。
我が家にはイタチの服や生活用品が置きっぱなしなので、暮らすのには何も困らない。
だから、困る。

「…あんた、いい加減家に帰ったら?さすがにまずいでしょ」
「一応親には言ってありますよ」
「言ってあるっていっても、未成年だし。さすがに何泊もするのはいかがなものかと」

狭いテーブルで2人で夕食を摂るのが当たり前になりつつある、今日この頃。
しかし、このまま行くと同棲に持ち込まれそうな気がした。
というよりも、現状が半同棲状態。
良家のお坊ちゃんを連れ込む泥棒猫だなんて思われたくもないし、彼の両親に心配をかけるようなことはあってはならない。

イタチは眉根を顰めて、視線を逸らした。
彼自身、いつか言われることとは思っていたのだろう。

「通う分にはいいけど、同棲はまずいでしょ」
「それは、俺が未成年だからですか」
「理由の一つにそれはあるけど」
「…俺が成人したら許してくれるんですか」
「まあ…多分」

理由の一つといったものの、それが大部分を占めていることをイタチも分かってはいるだろう。
大体、元々教師と生徒だった2人がこういった関係になるということはあまりよろしいことではないと私は思っている。
だから、できればイタチには別の女性と一緒になってほしいという思いはある。

しかし、その思いとは裏腹にイタチを求め続ける私もいるわけで。
私はどうしても、彼を追い出すということはできない。
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