39.遭遇
イタチの教師として動くにあたって、必ず出会ってしまう大嫌いな人がいた。
その人は戦争も知っているし、私のような孤児もたくさん知っていて、その哀れさを笑うような人だ。
全くもって嫌いなのだが、なぜか会ってしまう。
そのようなことばかり繰り返していると、愛着が沸いてくるとまで言われたことがある。

ろくろ首のその人の牙を受け止めながら、感慨深く思う。
忍の末端である私が、この三強の一人…大蛇丸に3度も会うことになる。
原因は言わずもがな、うちはの写輪眼に近しいということと大蛇丸が写輪眼に執着すぎるということにある。

「あら、アナタ…名無しじゃない。またうちはの面倒を見ているの」
「ええ、まあ…あなたには二度と会いたくなかったんですが」
「酷い言いようね…それにしても、今のアナタなら、簡単に殺せそうだわ」

他愛のない話をしているが、その顎は私の喉を噛み千切ろうと力を強めている。
11歳の姿の私では歯が立たない。
何とか片手で大蛇丸を食い止め、一瞬で分身を作り上げて不意打ちを試みた。
傷を負わせることはできなかったが、一度力を弱めるほかなかった大蛇丸をはじく。

私の背後にサスケ、サクラ、前方の木にナルト。
3人を連れて行くのは難しいが、何とかするしかない。
それが私の任務だ。

「サスケ、サクラを連れて行って!私はナルトを連れてく!」
「っああ!」

私は前方に、サスケは後方に向かって走り出した。
サスケを追おうとした大蛇丸に、クナイを投げてその足を少し遅れさせ、その間にナルトを保護。
正直、連れて行くのは荷が重いが、ナルトもまた、保護対象だ。
彼だけおいていくわけにもいかない。

ナルトを担いでいるため速度は遅いが、大蛇丸を追った。
どちらにしても、いつかはサスケが大蛇丸に追い付かれる。
その時にまた、ナルトを置いて応戦すればいい。
問題は、ナルトを担いでいるせいで、私の両手がふさがってしまっていることにある。
大蛇丸が現れたことを早く中央部に知らせなければならない。

「名無し!」
「…サスケ、腰のポーチの中にあなたのよく知ってるものがある。取って」

ナルトは申し訳ないが放り投げた。
目を覚ましたらしいサクラがキャッチしてくれたので大丈夫だろう。
その上で、大蛇丸の背後からクナイを持った手で首を掴む。
ただそれは分身だ、それは分かってる。
背後から攻撃が来るのも予測済み。

先ほどと同じように、クナイで彼の攻撃を止めて、背後のサスケにウエストポーチの中の猫笛を取らせた。
サスケはすぐにそれの意図を理解したようで、猫笛を思い切り吹いた。
音は出ないが、私の言葉とサスケの行動で大蛇丸はすべて理解したらしい。

「小憎たらしい…!」
「いい加減諦めたらどうです?過保護な兄が、飛んできますよ…サスケ!行きなさい!」
「させるわけないでしょ」

ぎりり、とクナイが音を立てる。
向こうも早く終わらせないといけないことが分かっているのだろう。
力を入れられると、どうしても身体の小さな私はうまく受けきれない。
クナイを流して、反撃を試してみるがリーチが足りない。

サスケには逃げてもらわなくてはいけない。
大蛇丸の狙いはナルトではなくサスケの写輪眼だからだ。
停止しがちなサスケだが、まだ声を掛けるだけで反応してくれるだけましか。

先に行かせようとすると、大蛇丸が分身を作って追いかけようとする。
私も分身で対応したいところだが、本当にこの身体だとうまくいかない。
一応分身も作って、クナイを持っている腕を一本犠牲にして目の前の大蛇丸の懐から飛び出した。
分身の大蛇丸に起爆札を放って、避けられるのは別にいい、とりあえず近くの木を爆破して視界を濁らせる。
ちょっとした足止めにしかならないが、サスケたちに指示を送る分には問題ない。

前方に見える中央塔は小さい…恐らくイタチが気付いてここまで来るまで、あと10分弱。
10分あの大蛇丸から4人で逃げ切らないといけない。

「名無し!」
「一応平気…あのね、あの人私じゃ止められない。だから逃げるしかないんだけど」
「あれの狙いは俺だろ?」
「そうだけど。私あくまでサスケを守らないといけないから放置して逃げるわけにはいかないの」

悪いことに、サスケは自分の身を差し出すことまで加奈が得ているらしいが、それは無論却下だ。
不安げにこちらを見ているサクラは真っ青な顔をして、じゃあどうするの?と聞いてきた。
どうするもこうするもない。

「サスケとサクラは振り向かずに逃げること。私は時間を稼ぎつつ後を追うから」
「…何で」
「何でも。いいからそうして」

口答えは許さない。
先に逃げること、それが今、全力で取り組むべきことだ。
サクラは頷いた、どうやら納得してくれたらしい。
サスケは不審げで、まだ信用しきっていないような顔をしていたが、それでもサクラの手を引いて先を走った。

私は大蛇丸と対峙すべく一度立ち止まる。
左腕は動かないほどではないが、それなりの傷を負った。
ただ、動かないように見せかけておく。
手負いだと思わせれば思わせるほど、ここで処分しておこうという気になるはずだ。

強くもない私ができることは、雛鳥を逃がす千鳥になることくらいだ。

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