37.外野
上忍の待合室では、ルーキーの担当上忍が3人で今行われている試験について話し合っていた。
現在時刻は、ちょうど一次試験の真っただ中といったこところ。
一次試験も見に行きたいところだったが、二次試験の準備に手間取り、そうもいかなかった。
アンコさんめ、面倒な二次試験にしてくれたものだ。

「おー、イタチ。久しぶり。試験官なの?」
「お久しぶりです、カカシさん。そうなんですよ、二次試験の試験官です」
「へえ…一次試験の話、聞いた?」
「いいえ。正直それどころではなくて」

二次試験用の同意書を手に持ったまま、俺はカカシさんの方へと向かった。
一次試験に関しては、精神的な監査が入るとのことだった。
そのため、実技が含まれることはないとのこと。

俺が受けた時とは全く違う一次試験だ。
自分の時は、一次試験からバトルロワイヤルをやらされた。
まあ、時代性というものだろう。

どうやらカカシさんたちは内容を知っているらしい。
気になるし、ちょっと聞いていこう。
名無しさんが苦労するような内容じゃないといいが。

「森野イビキだってさ、一次の試験官」
「…なんか想像できました」
「ちなみに、コテツたちが試験用紙用意してたんで、たぶん筆記だ」

あーナルト、大変だろうなあ…とカカシさんが乾いた笑いをこぼした。
いや、それよりも名無しさんがやばい。
名無しさん見えてないのにどうやって筆記を解くんだ。

これ本当の筆記も加味されるとすると、大変なことになる。
まあ、さすがに考慮される…よな。

「サスケなら大丈夫だと思う?イタチ」
「あいつ、別に勉強好きとかじゃないんで、難易度高いと無理ですね」

サスケは優秀と言われるが、あくまでそれは実力試験のみの話。
アカデミーでは申し訳程度の筆記もやるから、それもできるにはできる。
しかし、応用となれば話は別。
応用の勉強をしている子は、相当な努力家くらいで、一般的な子はほとんどやらない。

サスケもその一般の中の一人で、筆記関係は宿題として出たものをこなす程度だった。
だから、もし応用が出たら終わる。

「ま、でも、あのサディストだからねえ、筆記はただの飾りだと思うけど」
「ですね。…うまく残ってくれるといいのですが」
「何、お兄ちゃん心配?」
「心配っていうか…父からのプレッシャーもありますから。受からないと後々実家が大変なことになりそうで困るんです。俺まで縛られるんで…」

あー…と可哀想なものを見る目でカカシさんは遠くを見た。
おそらく一次試験を受けているサスケに向けてだろう。

うちは本家の内情は、あまりよろしくない。
俺が反抗を見せたため、後継ぎをどちらにするかで父は迷っている。
実力的には明らかに俺を後継ぎにした方がいいと思っているようだが、性格に難ありと認識されているため、し辛い。
しかし、サスケではまだ実力不足。
俺が成人するまでにはすべてを決めてしまいたいというのが父の考えだろうが、無茶な話だ。

サスケはその期待という名のプレッシャーをかけられ続けている。
申し訳なくも思うが、本当のうちはを見た時に、あいつがどう思うかが重要だと思っているので放っておいている。

閑話休題、そういうわけで俺は色々と心配だ。
家のことも名無しさんのことも。

「…ちょっと覗いてきます。もう二次試験の準備はできたし」
「そりゃいいね。なんかあったら教えてよ」
「それはいいですけど、俺、たぶん見に行ったあとは監視室直行ですので」
「あー次、死の森だっけ」
「そうですよ。では」

同意用紙を持ち直して、俺はその場から席を外した。
まずはアンコさんに用紙を渡して、一次試験会場のアカデミーに向かおう。

「アンコさん、お疲れ様です。こちら頼まれていたものですが」
「ああ、ありがと。あんたも食べる?」
「…後でいただきます」

甘党のアンコさんとは趣味こそ合うが、それ以外はあまり合わない。
団子は魅力的だが、それよりも一次試験が気になる。
早く行こうと思ったが、はたと足を止めた。
ここにまだアンコさんがいるということは、まだ一次試験の後の二次試験案内に移っていないということ。

「アンコさん、まだ一次試験終わってないんですか?」
「あー、なんか終わったらしいわよ」
「案内、行かなくていいんですか」
「もーうるさいわね、行くわよ」

食べていた団子の串をパックに戻して、アンコさんは立ち上がった。
どうやらこれから行くらしい。
彼女が姿を消してから、一本だけ団子を拝借して、それから後を追った。

俺が着いた時には、アンコさんも受験生たちもいなかった。
森野さんだけが答案用紙を集めていた。

「こんにちは」
「ああ、うちはの長男坊…弟の様子を見に来たのか」
「そんなところです」

サスケのことも気にならないことはないが、どちらかというと名無しさんが気になる。
答案の回収を手伝いながら、問題内容を見てみた。
…これは、サスケはおろかこの場の数名しか回答できないだろう。
正直、俺も正解できるか危ういレベルの難問が9問。

これは普通に解ける人は少ない。
情報収集能力が問われる試験だったということだ。
しかし、これ名無しさん情報収集しようがしまいが関係ない。
書き物何もできないからな、名無しさん。

「それにしても、白紙で出したのがお前の弟の班に2人もいてな」
「…ああナルト君と名無しさんですね」
「ああそうだ…名無しさん?」
「あ」

しまった。
普通に固まってしまった、うん、まずい。

「あー…そのうちわかると思うので、聞かなかったことに」
「珍しいこともあるもんだな」
「まあ、そうですね」

森野さんでよかった。
これがカカシさんとかだったら大変なことになっていた。
あの人は気になることがあると嫌がらせのごとく、根掘り葉掘り聞いてくるから。
少し厳しめな顔で、気をつけろよ、と注意されたがそれだけで済ませてくれた。

「イタチは二次試験の補佐だろう?行かなくていいのか」
「ええ。開始時間になるまでは大丈夫です。俺、監視官なんで」
「そうか。まあなんだ、気を付けろ」
「はい」

俺は解答用紙を回収し終えると、森野さんに軽く挨拶だけして二次試験開催場所である市の森に向かった。
二次試験は死の森でのサバイバル…もし、敵が潜んでいたとして、一番動きやすい試験がここだ。
どうなることやら、心配は尽きないがなるようにしかならない。

今朝、カオルに渡した猫笛が吹かれないことを祈りつつ、俺は監視室に入った。
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