35.新しい種
「お前ら青春してるなー!」

青春してるよなあ。

若い子たちは血気盛んで、良いような悪いような。
好きになった子を追いかけて、奪い合いなんてまあ、なんというか。
ロックリーと名乗った少年はサクラに面と向かって思いを告げた、なんというか、常識外れの正直者、真面目ものだ。
そして、全身タイツ…たぶん、ガイさんのところの人なんだろうなとすぐわかった。
見た目はふざけているが、実力は確かだろうと思う。

サスケたちが舐めてかかるのもしょうがないと思うが、舐めてかかると痛い目を見る。
それを経験するのも一興。
私はナルトとリー、サスケとリーの一戦を見て、微笑ましく思ってしまった。
顔には出ていないと思うが。

「ゲジマユはお前よりも努力していた、それだけのことだってばよ」
「…面白くなってきたじゃねーか」

サスケがそう簡単に敵う相手ではなかった。
ガイさんもそうだが、何か一つを極めた人間ほど相手取るのに大変なものはない。
その人はそれに命を掛けているのだから、極めたことのない人は大抵敵わない。
ただ、サスケも負けてふてくれたりすることなく、それを認めて前に進もうとしている。
後押しをしているのはナルトだ、いい仲間を持つとこうも違う。

青春だ…イタチにもこんな時期が…なかったんだろう。
あの子の中忍試験は、こんなのんびりした感じではなかった。
励ましあう仲間もいなければ、挑みかけてくる人もない…イタチは一人だった。
それを思うと、時代は彼に酷な仕打ちをしたものだ。

だがいつの時代も変わらないのは、中忍試験のこの緊張感である。
301のドアを開けた瞬間、大量の視線を浴びることになる。
洗礼といえば、そうなのだろう。

「サッスケくーん!」
「離れなさいよ、イノブタ!」
「これはこれは皆さんお揃いで」

ただその洗礼も、こちらの頭数が多いとあまり聞かないらしい。
ルーキー9名がばらばらと集まってくる。
奈良家、油女家、犬塚家、日向家、うちは家…勢ぞろいだ。

今年のルーキーは粒がそろっていて当然なのだ。
半分以上が名のある家の出自。
そうでなくても、家族に上忍がいる家の子供ばかり。
新人でも中忍試験に相応しいと思われるのは当然といえば当然…結局のところ、期待の星なのだ。

もちろん、サクラやナルトが中忍試験を受験するのが難しいというわけではない。
ただ中忍試験に推薦するのも、それなりな後押しがないとうまくいかない。
各家の親やその職場の近況が鑑みられることもままある。

イタチの時代はそれが顕著で、とにかく才能のある子はどんどん昇進させようと躍起になっていた。
子供が望む望まないにかかわらず、それどころか、総合的には落としてしかるべき子を、それなりに使えそうな度という理由で中忍に抜擢したりもした。
おかげで、中忍の死亡率が上がったことがある。

「君たち、少し静かにしないか」

閑話休題、とにかく、中忍試験はそれなりに危険を伴う試験である。
それをしっかり自覚している年上たちから見れば、無邪気にはしゃいでいる新人たちがうっとおしくて仕方ないのだろう

木の葉の額当てをした先輩が、止めに来る気持ちもよくわかる。
同じ木の葉の忍として、こういった後輩指導も重要といえばそうだろう。
気のいい人なのだろう、本当なら、私たちに混ざって目立つことはない。
現に日向ネジ、ロックリーなどは遠巻きに見ているだけだ。

それに静かにさせようとするのはいいが、他里の情報漏洩などよろしくない。
そんなことをすれば、漏洩されそうになった受験者の怒りを買うことになる。
それくらい少し考えればわかることだろう。
人は良くても、忍としてはあまり賢くなさそうだ。

「カブトさん!」

忍とは忍び、耐えるものだ。
久しぶりに会う同期と会えて嬉しいのはわかるがその喜びを抑え、堪えるべきだ。
そして、その行動を見て腹が立つは分かるが、それもまた、堪えるべき案件だろう。

音忍の攻撃を直接的には食らわなかったカブトだが、それでもダメージを受けた。
おそらくは音忍の名前に恥じぬ、音の攻撃。
衝撃波で内臓系にダメージを与えたのだろう。
ただ、さすがに本気ではなかったのか、嘔吐にとどまった。
本気で、尚且つ身体に直接当たったら相当のダメージが入るだろう。

下忍といえど、実力は相当らしい。

「静かにしやがれ!」

勝手な行動をしていた音忍を戒めるように、低い声が会場に響いた。
会場の雛壇に現れたのは中忍を引き連れた森野上忍だった。

第一試験からサディストと名高い森野上忍の試験とは、と私は密かに溜息をついた。

prev next bkm
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -