31.とある朝
朝、耳障りな機械音で目が覚めた。
柔らかな毛布が足に触れる、離れたくない。
しかし、もう起きなければならないのだろう。
今日からまた、任務が始まる。

「おはようございます、名無しさん…不機嫌そうですね」
「…そう見える?」
「はい。隠してくださいよ」

毛布を手放すのをたっぷりと惜しんでから、ベッドを下りて、顔を洗って、リビングへ。
理文具にはすでにイタチがいて、もうこれも日常の一環なので驚かない、朝食を用意していた。
この前謹慎を食らった反動か、またうちに来る頻度が増えている。

今日の朝食は和食、朝からイタチのハイスペックさが身に染みる。

「まあ、中忍試験は俺も監督をしますから」
「いや…イタチ1人じゃないでしょ、監督は」

豆腐の味噌汁に舌鼓を打ちつつ、イタチの話に耳を傾ける。
どうやらイタチは今年の中忍試験の監督になったらしい。

中忍試験は規模が大きいため、かなりの人数の中忍、上忍が監督や見張りを行う。
その中にいた血が入っていても、何らおかしいことはない。
むしろ今まで呼ばれなかったことのほうが珍しいくらいだ。

イタチは苦笑を交じりに、そうですけど、と言った。
彼が監督だとしても、彼以外の監督にはばれてはいけないのだから難易度は更に上がるといってもいいだろう。

「私、中忍試験の内容も知らされてないし」
「そうなんですか?それは…」
「割に合わない」
「ですね」

イタチはそこでようやく眉根をしかめた。
さすがに内容を知らされていないことには同情してくれるらしい。
内容どころか、試験実施上忍すら知らない。

ただ、火影様のことだから楽しませようとかそういうプラスの考えで教えていないのだとは思う。
少なくとも、嫌いでこんなことをする人ではない。

「いざとなったら教えてもいいって言われているし…」
「他里の者も多いですし、面倒くさそうですね」
「そうね。木の葉みたいにのんびりした人たちだけではないだろうから」

イタチは更に怪訝そうな顔をして、唸るように言った。

木の葉は温暖な気質と緑に囲まれた、比較的に穏やかな里だ。
その里の環境は、人にも影響を及ぼす。
里の人は穏やかで優しい人が多い気風であるともいえる。
里長である火影様を見れば、それはすぐに分かることだ。

ただ、他里はそういうわけでもない。
中には過激な考えの元動いている忍も少なくない。
それに、他里が入り込むこの時期は、スパイが多く入り込む可能性があることを忘れてはならない。

そういうわけで、なかなか心配がつきない時期なのだ。
まだ暗部に在籍しているイタチは危機感を忘れていない。
中には危機感をそっくり忘れてしまったような上忍もいるから困ったものだ。

「気を付けないと、いけませんね」
「まあそうだけど、気を張りすぎてもよくないから。一人でやるわけじゃないんだってこと、イタチは忘れがちだね」

私の一言で警戒心を増したらしいイタチだが、あまりそう肩に力を入れないほうがいい。
少なくともイタチ1人でやる仕事ではないのだし。
昔の癖か、気質か、イタチは何でも一人でやろうとするからよくない。

卵焼きを口に運びつつ、軽くそういうと、はっとしたようだった。

「そうですね」
「イタチが気にすべきことはホウレンソウを怠らないことね…ごちそうさま」

苦笑を零しているイタチを傍目に、食器を運んだ。
さあ、今日からまた下忍ライフが始まる。
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