18.油断大敵
タヅナさんの護衛を終えて戻ると、同時に修行を終えてバテたナルトとサスケが帰ってきた。
どうやら木登りに関してきちんとできるようになったらしい。
明日からはようやく班員揃って任務が出来そうだ。

ご機嫌なナルトたちと夕食をとり、これまた全員集まってのんびりと腹こなしをした。

「ふー、ワシも今日は橋作りでドロドロのバテバテじゃ。なんせ、もう少しで橋も完成じゃからな」
「ナルト君も父さんも、余り無茶しないでね!」

私は貴方の護衛とナルトとサスケの護衛で疲れていますとは言えず、静かに夕食の片づけをしていた。
橋は完成を間近に控えている。
今のところなにもないが、恐らくそれは再不斬の回復を待っているためだ。

ガトーには他の暗殺者もいるだろうが、下忍とはいえ忍を相手にするのであれば、忍を用意しなければならない。
元々、この国には忍は存在しないため、他国から依頼するか抜け忍に依頼するかの2つしか選択肢はない。
前者を選択するにはガトーは評判が悪すぎるし、後者を選択するには運と根気が必要だ、抜け忍はそう多くいない。
とはいえ、そろそろ再不斬も回復する。
決戦があるとすれば、もうすぐだろう。

そうぼんやりと考えているとナルトがなにやら扉の影をじっと睨んでいた。

「何だぁ?」

その扉の影にはイナリが、ナルトと同じようにじっとこちらを見ていた。
イナリはひどく辛そうな顔をしていて、今にも泣きそうだった。

2人は少しの間じっと見詰め合っていたが、イナリが堰を切ったように泣きながら叫んだ。

「なんでそんなになるまで必死に頑張るんだよ!修行なんかしたってガトーの手下には敵いっこないんだよ!いくらカッコイイこと言って努力したって、本当に強い奴の前じゃ弱い奴はやられちゃうんだ!」

この子はこの歳にして、何か絶望の片鱗でも味わったのだろう。
悟りきったような諦め、憤り、悲しみ。
それを淡々と私は感じた。
イナリの咆哮は続く。

「お前見てるとムカツクんだ!この国の子と何も知らないくせに出しゃばりやがって!お前に僕の何が分かるんだ!辛いことなんか何も知らないでいつも楽しそうにヘラヘラやってるお前とは違うんだよォ!」
「だから…悲劇の主人公気取ってビービー泣いてりゃ良いってか…お前みたいなバカはずっと泣いてろ!泣き虫ヤローが!!」

イナリの理不尽な怒りに対してナルトも腹が立ったのか言い返した。
これはどっこいどっこいだ、どんぐりの背比べ。

ナルトもイナリもお互いの事情を知らない。
お互いに無神経に相手の傷を抉るようなことを言っているのだろう。
若いうちはよくあること、だろう。
私は2人の喧嘩を無視して、食器を運んだ。

キッチンには困惑気味のツナミがいた。

「大丈夫ですよ。イナリくんもナルトも強い子ですから」
「え…、ああ、そうね…そうよね」

ナルトは怒ったまま外に出て行ってしまった。
森の方向に向かっているので、修行を再会するつもりだろう。
イナリは泣きながら部屋に篭ってしまった。
ナルトに言われた後、カカシにも注意されてしまったのでへこんだだろう。
しかし、これがきっかけになる可能性もある。
何がかわるきっかけになるかなんて分からないのだから。


次の日、夜に外で修行してチャクラを使いすぎたナルトを置いて、タヅナの作る橋へと向かった。
橋の近くまできて、ランは異変に気づいた。
嫌に静かだ、普段は活気があるというわけではないがそれなりに声がする。
だというのに、今日は人の気配があるにもかかわらず静かだ。

「な、何だこれは!」

橋に到着すると、作業員が血を流して倒れていた。
どうやら、敵襲にあったらしい。

「どうしたんじゃいったい!何があったんじゃ!」
「ば、化け物…」
「化け物って…」

辺りに2人分の気配がある。
カカシはその気配を探り、辺りを警戒していた。
じわりじわりと、霧が濃くなる。

「来るぞ!」

サスケとサクラと私でタヅナさんを囲み、円を組む。
じわりと霧とともに流れ込む緊張感と殺気。

隣のサスケは少し震えているようだ。
しかし、それは頼りなく弱弱しいものではなかったので特に心配はしなかった。

「久しぶりだな、カカシ。相変わらずそんなガキをつれて…また震えてるじゃないか、可哀想に」

霧の中から聞こえるその声と同時に、辺りに水分身が現れた。
隣のサスケの震えが大きくなる。

「武者震いだよ!」
「やれ、サスケ」

動きたくてうずうずしていたのだろうサスケが水分身に向かって走り出す。
こちらはサスケが抜けた部分をカバーするように陣営を少々変えた。
サスケは猛スピードで水分身の間を塗って走り、破壊して回った。
足元が水浸しだ、これは相手に利が出てしまうのでやめて欲しかったが下忍にそこまで求めるのは酷だろう。

後ろからサクラのすごーい…という声が聞こえた。
全く暢気なものである。

「ほー、水分身を見切ったか。あのガキ、かなり成長したな。強敵出現ってとこか?白…」
「そうみたいですね」
「どうやら俺の予想、的中しちゃったみたいね」

再不斬の隣には白面をした青年の姿があった。
その姿は間違いなく、あのときの追い忍の姿だ。

「あのお面ちゃん、どう見たって再不斬の仲間でしょ。一緒に並んじゃって」
「どの面下げて堂々と出てきちゃってんのよあいつ…」
「あいつは俺がやる。下手な芝居しやがって…俺はああいうスカしたガキが一番嫌いだ」
「カッコいい、サスケくん!」

…どこから突っ込むべきか分からないので、私は無言を突き通した。
背後のタヅナも警戒心をそがれたのか、ため息をついている。

敵は冷静にその様子を見ているだけだ。

「たいした少年ですね。いくら水分身がオリジナルの十分の一程度の力しかないにしても、ここまでやるとは…」
「だが先手は打った。行け!」
「はい」

白はさっとサスケの前に立ちはだかった。

先手とは恐らく、この足元の水。
これがある限り、どこから水分身が現れてもおかしくはない。
その上、ここは橋の上、すぐ下は海だ。
地の利は向こうにある。

「サクラ!名無し!タヅナさんを囲んで俺から離れるな。あいつはサスケに任せる」
「はい!」

目の前では既にサスケが白との先頭を始めていた。
相当のスピードでやりあっている。
私はそれを見つつ、背後への警戒も怠らないようにとなかなか忙しい。

「君を殺したくはないのですが、引き下がってはもらえなえないでしょうね」
「アホ言え」
「やはり。しかし次、貴方は僕のスピードにはついてこられない。すでに僕は3つの先手をうっている」
「2つの先手?」

先手は1つではなかったらしい。
クナイと千本でお互いの攻撃を止めたままの体制の2人は、話を続ける。

「一つ目は、辺りにまかれた水。そして二つ目に僕は君の片手をふさいだ。したがって君は僕の攻撃をただ防ぐだけ」

そういって、白は空いている左手で印を結んだ。
片手で結べる印は一般的には使用されない。
よって、彼はオリジナルの技を持っているということだ。

これはまずいことになったかもしれない。

「秘術、千殺水翔!」

足元の水を跳ね上げると、その水が千本の形になり2人がいた場所に襲い掛かった。
白はさっとその場から後ろに跳んで避けた。
見えていないようだが、サスケも避けている。

サスケは上空に逃げていた。
そこから、手裏剣を白に向かって投げる。

「案外とろいんだな」
「!」
「これからお前は俺の攻撃をただ防ぐだけだ」

上空から白の背後に移動したサスケは蹴りを入れた。
白は蹴りをくらい、後方にふっとぶ。

「ぐっ」
「どうやらスピードは俺のほうが上みたいだな」
「ガキだガキだとうちのチームを舐めてもらっちゃあ困るねぇ…」

カカシが笑いながらそういった。
余裕を持つのはいいが、そんなことをしている暇があったらさっさと片付けろといいたくなるのを抑えながら、片手に持ったクナイを強く握り締めた。
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