結論は
ラブラブだと
いうこと





彼女は2年4組の女子生徒である。彼女は入学当初、ある人物に恋をしていた。隣のクラスの折原臨也という男子生徒だ。整った顔立ちは女子生徒たちの憧れの的だった。しかし、今彼女は、臨也に告白などしなくて良かったと思っている。

「シズちゃん、おはよう!今日も素敵だね、可愛いよ」

毎朝8時15分、HRの前に彼はやってくる。目的は窓側一番後ろの席に座る、平和島静雄という生徒だ。こちらもかなりの男前で、どちらかというと綺麗の分類に入るような男だった。長身で、喧嘩が強く近寄りがたいが、実はとても優しい。以前、彼女は日直だった際、静雄にプリントを運ぶのを手伝ってもらったこともある。

「臨也…おはよう、まででいいんだよその後はいらねぇ」
「どうして?本当のことを言っただけなのに?ねえ、君もそう思うよねえ?」
「えっ?え、う、うん…」

いきなり臨也に話しかけられ、彼女はびくりとした。静雄ははあ、とため息をついていたが、顔はどこか赤いような感じがした。静雄は彼女へ、悪いなと呟いた。

「巻き込むなよな」
「やだあぁシズちゃん、嫉妬!?嬉しいっ…シズちゃん、心配しないで!俺はいつだってシズちゃんのものだよ…!愛してるよ!」
「うっ…うるせえ!帰れ!」
「ちゅーしたら帰ってあげようかなぁ〜」

にやにやとしながら、静雄の一瞬の隙をついて臨也はちゅっと頬にキスをする。静雄はかああっと更に顔を赤くし臨也を叩こうと手を上げるが、臨也はいつの間にかもうドアの傍にいた。

「また後でね、シズちゃあん」

ばいばーいと手を振って臨也は去って行った。静雄はクラスの人間からの視線を避けるように、ふいっと窓の外を向いていた。だがもうこのクラスに二人のことを驚く人間なんていない。彼女もそうだった。ああ、またか、としか思わない。静雄は必死に隠しているらしいが、恋人同士だなんて、見ていてすぐに分かるのだ。






彼は3年1組の男子生徒である。昼休み、彼は屋上でいつも部活の仲間たちと一緒に昼食を食べる。今日は購買部で買った数量限定の焼きそばパンを勝ち取って気分が良かった。仲間たちに羨ましいぞと言われながら、彼はそれにかぶりつく。それと同時に、少し離れたところから会話が聞こえた。

「臨也、ほらよ」
「へ?…シズちゃん、これ何?」
「はあ?…て、てめーが言ったんだろうが、弁当…」

平和島と折原だ、と彼はそちらを向いた。下級生ではあるが、上級生でも知らない者はいないほど、有名な二人だった。仲が悪いと聞いていたのだが、一緒に昼食をとっているようで、あれ?と彼は思った。

「えっ…ま、まさか…シズちゃん、これは…」
「…幽が、幽がだな、今日は弁当いらないの忘れてて、俺、二つ作っちまったから、その、それで」
「……っしゃああああ!!」

彼だけでなく、その周りにいた生徒たちが皆びくりと折原の叫び声に驚いた。折原はきらきらした瞳で、手に乗った弁当箱を青空に掲げている。

「し、シズちゃんが…ついに俺に手作りお弁当を…!!」
「い、いや、ちげーから!別におまえのために作ったんじゃな」
「そおんな可愛い顔で言われてもね!ああ、食べるの勿体無いよ、どうしよう…」
「君たちまた騒がしいねえ」

ギィと屋内へ続く階段への扉が開き、これまた下級生である岸谷という生徒が平和島と折原の方へ向かって歩いてくる。確か二人の友人で、クラスメイトではなかったか。何かと名前を聞く生徒だ。

「聞いて新羅…ほら、見て、これシズちゃんの愛妻弁当なの!」
「おい臨也ふざけんなっ、愛妻弁当って…」
「へえ、よかったじゃん臨也。静雄もなんだかんだ甘いんだから〜」
「だから違うって…!」

平和島の顔は真っ赤に染まっていた。彼は少し、可愛いな、と思う。が、その時折原とちらりとだが目が合った。彼は折原臨也と喋ったこともない。

(、な、なんだ?)

ぎろり、と先ほどまでの折原の幸せそうな表情とは打って変わって、鋭い切り裂くような視線を投げかけられる。彼は慌てて持っている焼きそばパンへ視線を戻し、黙々と食べた。早めに食べ終わり、すぐにその場を立ち去ることにした。

「ん、もう食ったのかよ?」
「ああ、ちょ、ちょっと先に教室戻るわ」

友人たちにそう言い、立ち上がって屋上を後にした。はあ…とため息をつく。折原はやっぱり関わらないほうがよさそうだ。





(、わッ)

彼女は1年1組の女子生徒である。彼女は慌ててしゃがみ、草木の陰に身を隠した。部活が終わり、駐輪場へはこの体育館裏を通るのが近道だったのだが。

「、ン…」

甘い声が聞こえてくる。彼女の心臓の鼓動はどっどっと早い。どうやら気づかれてはいないようで、ひとまずは安心する。彼女はそうっと草の間から目を覗かせた。そこには男子生徒が二人。黒髪と金髪。金髪の生徒は体育館の壁に押し付けられ、

(き、キス、)

黒髪の男にキスを、されていた。彼女は早く立ち去らねばと思ったが、ここで変に身動きすれば見つかってしまう。しかも彼女はあの二人に見覚えがあった。この学校でかなりの有名人だ。ひとつ上の学年の、折原先輩と平和島先輩。

(で、でも、平和島先輩って…す、すごい暴れる人だったはずじゃ、…)

彼女は信じられなかった。噂では数々の不良たちをなぎ倒していると聞いている。けれど、もうひとつ彼女は噂を聞いたことがあった。折原先輩と平和島先輩は、恋人同士だという噂である。これは1年生の間で一時期話題になったが、彼女は特に興味もなく、真実だとも思わなかったのだ。

「、臨也っ…」
「ん、…なに?シズちゃん」
「あ、…ん、う」

折原先輩の腕が平和島先輩の腰に回っている。が、平和島先輩は本気で抵抗してはいないようだ。まさかあの噂が本当だったなんて知らなかった。彼女はどうすればいいのかわからなくなる。が、ここにいてはいけないことは確かだ。どうにかして駐輪場まで、と音をたてないようそうっとそうっと足を踏み出した。その時である。ガサ、ガササっと部活で使うテニスラケットが草木の小枝にひっかかってしまう。

(っ!!)
「、なっ…!?」

驚くような平和島先輩の声が聞こえた。彼女は泣きそうになりながら、もう強行突破しかない、とラケットをぐいと引っ張り、一目散に走って逃げた。これでもテニス部で足腰は鍛えている方である。駐輪場まで来ると、ポケットから鍵を取り出し、目にも止まらぬ早さで自転車の鍵をはずし、跨るととにかくとにかくペダルをこいだ。家に無事着いてからも彼女はどうにも落ち着かなかった。

(ど、どうしよう…先輩たちに口止めだとか脅されて殴られたりしたらっ…)

彼女は誰にも言わずにおこうと心に誓った。平和な高校生活を送るためにも。





「シズちゃん、そんなに怒んないでよ…」
「………」

静雄は完全に無視を決め込んでいた。臨也と視線を合わせようともしない。臨也はため息をついた。つきたくもなる。

「大丈夫だよ、そんなに見られてないって」
「……」
「…第一、もう俺たちのことなんて学校中に…」
「誰のせいだ!誰のっ…」

先ほどの体育館裏での出来事を思い出したのか、静雄は顔を真っ赤に染めた。だがその表情はどこか泣きそうだった。だがあれは静雄も同意の上だった。結局(多分)生徒に目撃された後、静雄は臨也を突き飛ばし、それ以上はなくなってしまった。惜しいことをしたなあ、と臨也はやはりため息をつくしかない。

「…そんなに知られるの、嫌なの?」
「、」
「だってこうして俺がシズちゃんを守らないと…誰か他の奴に持っていかれるのは嫌だからね」
「……」
「好きだって口に出すの、悪いことかな?」

すたすたと帰り道を先に進んでしまう静雄に言う。臨也はくる、と振り返った。静雄はとても可愛い臨也の恋人だ。俺のものなんだと世界中の人間に大声で叫びたいくらいだ。だが静雄が嫌がるのでなんとか押し止めているが。

「…場所を考えろって言ってんだ。悪い噂がたてば、おまえが困る」
「…シズちゃ、」
「女子にも人気あるんだからよ、おまえは」
「俺はどんな噂がたとうと、シズちゃんが俺の傍にいてくれるならどうだっていいけどね」

にこりと微笑んで言えば、静雄は顔を赤く染めながら照れ隠しかため息をついた。静雄以外を見るつもりもないし、眼中にもない。だが臨也のことを気にして嫌がってくれたのかと思えば、嬉しかった。

「愛してるよ」
「…どうしようもない奴だな、おまえ」
「そんなどうしようもない男の恋人なんだよ、君は」
「俺もどうしようもない」

きょろ、と辺りを見回し、誰もいないことを確認する。静雄はそっと臨也の手に自分の指を絡めた。臨也は満足そうに笑う。やはり手放したくはない。愛をいつでもたくさん与えてあげたい。

「愛してる」
「……」
「大好きだよ。俺は何度でも、シズちゃんに言いたい」

静雄は少しだけ口元を緩めて笑った。堪らなく愛らしかった。



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10000hitフリリク:みどり様
「高校時代の臨→→静(本当は恋人同士)で甘甘。静雄を好きなことを周囲に隠さない臨也(と恥ずかしがるシズちゃん)一般生徒たちメイン」

お待たせいたしました〜!
リクエストありがとうございました!!

一般生徒メインということでしたので、生徒たちの視線から書いてみました!
とても楽しませていただきながら書かせていただきました〜!
こ、こんなものでよろしかったでしょうか…!よければお持ち帰りも可ですので…!

これからもサイト共々、どうぞよろしくお願いします。


Like Lady Luck/花待りか
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201010
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