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「…ハァ」

銀時の口から、思わず溜息が零れる。
見渡せば、近くにいた筈の仲間の姿は全くない。
それどころか、銀時を囲むように、天人が立ちはだかっている。

「囲まれた…か」

最悪とも言えるこの状況。
“白夜叉”といえども、そう簡単に抜け出せるとは思えない。

「気乗りしねーけど、やるっきゃねーよな」

流石に敵の真ん中でじっとして、味方を待つ訳にはいかない。
銀時は覚悟を決め、刀を握る手に力を込めた。
そして、足を踏み出そうとした瞬間──

「ぎゃあぁぁっ!!」

銀時の背後から悲鳴が上がった。
何事かと銀時が振り返るよりも早く、次の悲鳴が上がる。
直後、返り血で所々紅くなってしまった白い羽織を、ひやりと冷たい風が揺らした。
藍色の毛先が、銀時の頬を微かに掠める。

『何ボサッと突っ立ってんの?』

風の音と悲鳴に混じって、そのどちらにも属さない声が耳元に響いた。

「…え…?」

その声で我に返り、銀時がハッと顔を上げる。
次の瞬間には、視界に映る敵のほとんどが、声の主によって一掃されていた。

「何だ、コイツ…」

目の前ではためく青い羽織を呆然と眺めていると、再び声が聞こえた。

『後ろッ!!後ろにまだ残ってるよ!!』

その言葉に、弾かれたように振り返れば、確かにまだ武装した天人が何人も残っている。

「チッ」

銀時は軽く舌打ちし、そちらに向かって駆け出した。


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