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「氷柱殿が女の子扱いされるのが苦手な理由って…」

黙って話を聞いていた桂が、不意に口を開いた。

『ん、まぁ元々苦手ではあったけどさ…確かに一番の原因はこれかな』

あの一件以来、私は短くなってしまった髪を無理矢理結い上げ、胸にさらしを巻き、一人称を“僕”に変え、男として振る舞おうとした。
そう告げると、何故か桂がくすりと笑った。

『どした?ヅラ』

「ヅラじゃない桂だ。いや…俺は昔、女と間違えられた事があってな」

桂は髪を一旦ほどくと、当時私がやっていたように、高い位置で結い直した。

「こうしていたのだが、女には見えぬだろうに」

『残念ながら女にしか見えないよ』

そう突っ込んでから、『私と逆だね』と小さく付け加えた。

「…そうだな」

頷き、桂はふと外に目をやった。
私も外を見ると、冷たい雨がぽつりぽつりと降り始めたところだった。



陸・冷たい雨降る空の下
(冷えきって、凍り付いて。)


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