B


「氷柱殿、一つ聞いてもいいか?」

『んー?』

振り返ると、桂が腕組みをして立っていた。

「氷雨の名前、何か謂われがあるのか?」

私の膝の上で丸くなっている氷雨に視線を向け、桂が問い掛けた。

『…別に、謂われってほどじゃないよ』

構わないと、桂が頷く。

「言いにくいのならば、無理にとは言わぬが…」

『ううん、言わせて。私も誰かに聞いてもらいたかったから』

氷雨を抱き上げ、私はゆっくりと立ち上がった。

『氷雨っていうのはね、私の親父の名前なんだ』

「氷柱殿の…父親…?」

ピンと来ないのか、桂が首を傾げる。

『そういや私、家族の話とかしてなかったね』

「そうだな。まぁ、俺達も似たようなものだが…」

氷雨が欠伸をして、目を閉じた。
開け放した襖から入ってくる風が心地いい。

『ヅラ、私が攘夷に参加した理由、分かる?』

視線は氷雨に向けたまま、桂に質問した。

「父親と関係があるのか?」

『…流石、ヅラ。鋭いね』

私は顔を上げて苦笑した。


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