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「氷柱殿、そっちは川だぞ?」

桂に指摘され、氷柱は一瞬足を止めた。

『でも…多分こっちで合ってると思う』

そう言いながら、再び桂の手を引いて歩き始める。
桂の言葉通り、しばらく行かないうちに川に至った。

『川向こうなのかなぁ…』

戦乱で橋が壊れているため、向こう岸まで渡るのは容易ではない。

『にゃんこー、いたら返事しなさーい』

すると氷柱の声に応じる様に、微かに猫の鳴き声が聞こえてきた。

「氷柱殿、あれ…」

桂が川を指差す。
上流の方から、箱の様なものが流れてくるのが見えた。

『まさか、あの中に…?』

氷柱は川に寄って、箱の中を覗き込んだ。
何か柔らかなものが、もぞりと動いている。

(猫だったら…助けなきゃ!)

そう思った時には、氷柱はもう川に飛び込んでいた。

「氷柱殿っ!?」

水飛沫が上がり、桂の足元まで濡れる。

「大丈夫か?」

『うん、大丈夫ー』

水面から、氷柱がひょっこりと顔を出した。
幸い、川はそれ程深くはないらしい。
慣れた様子で水中を移動し、箱に近づいていく。

『今助けるからねー』

氷柱が箱に手を伸ばした。



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