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『ところで、どうして此処にいるの?』

暫く笑い合った後、私はふと浮かんだ疑問をぶつけた。
すると近藤さんは、顔を引き締めて真面目な表情になった。

「そうだ、氷柱…」

近藤さんの手が、すっと差し出される。



「俺達と共に上京しないか?」

『上京…?』

全く予想外の言葉に、私は少し戸惑う。
道場には戻らないのか?
ミツバは上京するのか?
様々な疑問が浮かんだが、すぐにかき消された。



『…ごめん、近藤さん』

私は首を横に振った。

「親父さんのことなら、俺達も一緒に…」

言いかけた近藤さんを遮り、私は続ける。

『ううん、親父のことは…まだ諦めてはないけど、それだけじゃないから』

すると、近藤さんは宿舎に視線を向けた。

「仲間が、出来たんだろ?」

『…うん』

やっぱり、近藤さんには適わないな。
銀時達のことは、全く知らないはずなのに。

「親父、見つかるといいな」

「ま…死なない程度に頑張ってくだせェ」

トシと総悟はそう言って、背中を向けて歩きだした。
総悟はひらひらと手を振ってくる。

『ありがと』

私は手を振り返した。

「じゃあ…俺達はもう行くけど、達者でな」

近藤さんが、名残惜しそうに手を振る。

『泊まってけばいいのに』

「いや、他の奴等を待たせてるから」

あ、そっか、と私が笑うと、近藤さんもまた笑った。

『皆に宜しく言っといて』

近藤さんが頷き、トシと総悟を追い掛けて行った。



──バイバイ。

私は三人の背中に向かって、大きく手を振った。



肆・揺れ動くココロ
(過去と現在の狭間で、ゆらりゆらゆら不安定)


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