B


「氷柱ー」

銀時が氷柱の名前を呼びながら歩いていると、急に、頬に突き刺さるような冷たい風が吹いてきた。

「…氷柱…?」

氷柱と初めて会った時も、確かこんな風が吹いていたっけ。
銀時はそんな風に思った。

「氷柱ー?」

ひょっとしたら、という思いから、銀時は風が吹いてくる方に向かって走り出した。



―――――――
―――――
―――



「…氷柱…と、ヅラ…?」

冷えきった風を辿って来た銀時の目の前で、天人と戦う二つの影。
長い髪をなびかせて剣を振るう、氷柱と桂の姿が見えた。

「………!!」

銀時は、思わず二人に見入っていた。
凍て付くような表情で天人を斬っていく二人は、まるで舞を舞っているように見える。
その剣筋は研ぎ澄まされていて、無駄な動きが一切無かった。

桂は“狂乱の貴公子”と呼ばれていたが、氷柱は──

「…舞姫…?」

以前、自分と共に戦った時よりも、更に華麗に戦場を駆ける氷柱は、まさしく戦場の舞姫だった。


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