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「…で、コイツ誰?」

握り飯を一つ平らげた後、高杉はようやく氷柱の存在に気が付いた。

「俺の女」

銀時が冗談めいた口調で言うと、その背後でカチャリと音がした。

『銀時…寿命縮められたいの?』

氷柱が刀を鞘から抜きながら不敵に笑う。

「ゴメン、冗談です」

引きつった笑みを浮かべて銀時が謝ると、氷柱は刀を鞘に戻した。

『私は氷柱。一応女の子だけど、女の子扱いされるの嫌いなんで。ちゃん付けしたらブッ殺すから』

氷柱はまたも笑顔で、物騒な事をさらりと言ってのける。

「ほォ…」

一方高杉は、興味ありげな目で氷柱を一瞥し、再び握り飯に手を伸ばした。

「オイ高杉、それ俺の握り飯だろうが!!」

その手を叩き、桂が握り飯を奪い取る。

「いーや、俺のだ」

更に銀時が桂の手を掴み、握り飯を奪おうとする。

『…たかがおにぎり一個で何やってんだか』

氷柱がぽつりと呟く。
その横で、坂本が笑いながら言った。

「なかなかに、面白い奴等じゃろう?」

そして坂本も、握り飯争奪戦へと身を投じていった。

『…ふふ』

氷柱の口元は、自然に緩んでいた。

『ホント、面白い奴等』

しばらくは飽きずに済みそうだと思いながら、空色の瞳はこれから行動を共にする者達を見つめていた。



壱・出会った先から波乱の予感
(コイツらと行動すれば、きっと何かが起こるはず)


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