リズム様よりお題交換


神羅カンパニー、それは世界に名を轟かす大企業であり、 幅広く事業を行う最大規模の財力を持つ。
その中でも有名なのは、少年なら誰でも憧れるであろう『ソルジャー』という職種だ。
ソルジャーとは、体力的にも精神的にも強い者がなれる、悪者を倒す正義のヒーロー。
選ばれたひと握りの存在だけがなる事を許される職種。
ちなみに位が1st、2nd、3rdと3つに分かれていて、1stは至高の存在だ。
1stであるセフィロス率いる英雄たちに憧れて世界中の男子はミッドガルへと旅立つ。
それはかつて誰もが1度は経験したであろうこと。
しかしてソルジャーがこんなにも脚光を浴びているのには光に対して影があるからに相違ない。
神羅カンパニーの影、すなわち私達『タークス』。
表面はソルジャーの素材となりうる者のスカウトだが、実体は人攫いや暗殺などの神羅の敵となる可能性を潰しにかかる組織だ。


「おい、まだやるのか?」

「今日は徹夜。」


二徹目の鬼のような形相でパソコンに向かう私にレノはため息をついた。
仕方ないじゃないか、私だって早く帰って寝たい。
今日は雪降ってるし、地味にオフィスの中寒いし。
ぶすっとした顔をするなと顔を顰められる。
それはこっちのセリフだ!

レノは私の教育担当だ。
そのくせ不真面目でチャラチャラしていて、初対面から私に突っかかってきて連絡先を尋ねてきた。
仮面のような甘い顔をして、私に向かって「女として仕事をしろ」と言ってきた時には腹が立ちすぎて思わず男の大事な部分を蹴飛ばしてしまった。
あれは悪かったと思ってる、髪の毛1ミリ分だけ。
それはそうと、仕事が出来るものだから気に食わない。
早くコイツよりも出世しなければ。
それでコイツをこき使ってやる。
女だからって舐めてたら痛い目に合うんだぞ。
意志をさらに固めてパソコンのエンターキーを押す力が強くなる。
それを見たレノが苦笑した。
椅子の背の部分に片手を置いて顎をつき、両足を開いて力無く垂らしている。
顔がいいものだがら妙にカッコよく見えてイラつく。
まだいたのか、早く帰れ。
そんな私の気持ちを感じたとったのか、レノは私に背を向けて立ち上がった。
よし、いいぞいいぞ、このまま帰ってしまえ。
ニヤリ、と笑った瞬間、アイツはこちらを向いて近づいてきた。

……は?

唖然とする私をそのままに、アイツは笑いながら私のデスクのすぐそばまで来た。
笑いながら私を見下ろしている。
そう、見下ろした、のだ。
その顔は、私の心情など知らないからか余裕に満ちている。
腹が立った。
思い切り私情で理不尽なのだが、腹が立った。
生理前だからかもしれない。
思わずレノの横っ腹めがけて拳を打ち付ける。


「……何やってんだぞ、と。」

「チッ。」


くそ、腹が固い。

私は幼い頃からソルジャーになりたかった。
男子がなるものだ、お前には無理だ、そんな意見を多々聞いてきたが、どうしても諦めることが出来なかった。
そんな私はソルジャー試験に挑んだが、やはり肉体面で男子より劣り、あっさり試験に落第した。
悔しかった、女だというだけでここまで意見を叩き潰されるなんて気に食わなかった。
悔しくて悔しくて、やけ酒した私は神羅の社員に突っかかってしまったらしい、全く覚えがないが。
それがタークスのエース、レノだった。
最初は女だから、と優しく(?)扱っていたのだが、次第に私が暴走して殴り始めたらしい。
それを止めたレノは酔っ払いの戯言である「女だから馬鹿にされるんだ、ソルジャーになれないんだ」といったことを延々と聞かされたようだった。
それは正直にすまないと思ってる、髪の毛2ミリ分だけ。


「腹が立った。殴った。以上。」

「ちゃんと文を繋げよ。」

「てか早く帰ったら?彼女とか待ってるでしょ。」


暗に早く帰れと言えば、レノは少し驚いた顔をしてニヤついた。
そしてまた椅子に座って足を組んだ。
帰るんじゃないのかよ。


「へー、俺に彼女いると思っているのか。やっぱりお前も俺をイケメンだと思っているんだな、と。」

「きも。」

「その一言は傷つくぞ、と。」


そんなに傷ついていないような顔のくせによく言うね、と思いながらも返事をしない。
どうせ返事をしたところで、また軽口が返ってくるだけ。
別にそれは嫌じゃないけど、何かが嫌なのだ。
何か、は分からないから余計に腹立つんだけどね。


「まあ、残念ながら彼女はいないぞ、と。」

「へー、意外。」


おっと、返事をしてしまった。
でも仮にもイケメンだというのに勿体無い、何故彼女ができないんだ?あっ、性格のせいか。
ここでおよそ0.5秒。


「お前失礼な事考えてるだろ。」

「ご名答。」


さらり、と返せばため息をつかれた。
何故だ。
あー、と言いながらレノは視線を宙に彷徨わせながら、私にポツリと聞いた。
それはもう、先程は段違いのトーンで。


「……俺になんで彼女がいないか、わかるか。」

「知らない。」


別にそんな事興味ないしなと思いながらキーを叩く。
その姿に苦笑したレノは、まあいいか、と呟いた。
そして、キィと椅子の音を立てて立ち上がる。
お、やっと帰るのかと思えば、アイツは私の頭をぐしゃっと撫でた。
それはもう、下手くそに。


「ちょっと、ぐしゃぐしゃじゃない!」


怒りながらアイツを見ようとすれば、頭に置いたままの手がそれを押さえる。
首折れるんじゃないかというレベルじゃない?
いや待ってこれ折れるやばい。


「待ってまじ折れる。」

「おー、悪ぃな。」

「思ってないでしょ!」


そう言いながらも若干力を弱めてくれるのはありがたいところだ。
感謝しよう、髪の毛3ミリ分だけ。
今度こそ、と思いながら顔をあげようとすれば黒い何かが頭に被さった。
え、ちょ、何これ。
あたふたとしながらそれを取れば、それはレノのスーツの上着だった。
何故、と彼を見ようとすれば、アイツはもうオフィスの出口にいて。
いつもと違うような顔を見てやろうと思ったのに、何だか呆れたように笑っていた。


「寒ぃんだろ?持っててくれねぇか。」

「え、でも外雪が…」

「俺は暑ぃからいいの。」


私の静止も聞かず、手をひらひらと振りながら出ていこうとする。
あまりに速い展開に頭がついていかない。


「あ、それと。」


そんな間抜け面をしているであろう私を振り返って言った。
それは、ニヤリと笑ったオプション付きで。




無理するなよ、と




「じゃあな、蜜柑。」

そう言って颯爽と去って行ったアイツが嬉しそうに笑っていたとか、私が赤面したとか、そんなの知らない。



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