2019-3-8 Fri 14:50
目を開けた。

頬を熱い風が叩いていく。ぱちぱちと音を立てて、それを吹き荒れる熱風が崩していく。
木造の建築物、よく遊んだ見張り台、小さい頃から使っていたベンチ。それら全てが、真っ黒に染まっていく。 私の周りは瓦礫の山だらけだった。大切にしていたはずの写真立ても炭となって面影がない。
ここは、私が住んでいた村だった。毎日村の人たちと仲良く暮らしていた。ちょっと不器用な幼馴染をからかいながら、楽しく暮らしていたはずなのだ。それなのに。

所々で火が上がる。何やら嗅いだことの無い焦げ臭さが鼻につく。厚さをものともせず、私はその正体を探し始める。
なんだろう、これは確か獣を焼いた時の匂いに似ている。いや、それよりも生臭い何かがある。これはどこかで嗅いだことのある匂いだ。私は知っている。知っているけど、これは理解しては行けない何かなのだ。なんだ、何なんだ。

足に何かが当たる。蹴ってしまったそれは、呆気なく崩れてしまったようだった。なんだろうか、これは。建物にしては柔らかすぎ、小さすぎる。よく目を凝らして見てみようと顔を近づける。むわっと薫るタンパク質を焦がした匂い。その正体に気づいた瞬間、バッと顔を逸らし、体を遠ざけようとする。その瞬間、腕を、掴まれた。

「なんで、」
「た、すけて、くれ、」
「ひぃっ!」

『それ』は、人だった。もう原型を留めていないに等しいが、確かに人だった。わたしに助けを求めた『それ』は、ぎゅっと腕を掴んで離さない。熱い、腕が焦げていく。

「やめてよ!ねえ!」
「たす、けて、」
「むりだよ!」

腕の焦げていくあまりの暑さに泣き叫ぶ。誰か、誰か、私を助けて。
叫びながら周りを見渡すと、そこには『それ』と同じものがゴロゴロと転がっていた。その中には、私の知った顔がいくつも、いくつもあって。

腕を掴まれていた力がするりと抜ける。力尽きたようだった。それでも私はそこから動くことが出来ない。みんな、死んだのだ。何故か私は生き残ってしまった。置いてかれてしまった。
ああ、ああ、もう遅すぎた。結局私が自分が可愛い。誰も助けられない。助けたいだなんて、ただのエゴだ。そんな醜いモノになってしまったのだ。ならば、ならばもう、生きていたって。

建物が倒れてくる。それを避けず、巻き添えとなる。瞬く間に火に包まれていく。熱い、熱い。だが、逃げてはならない。ぐっと目を瞑り、叫びたいほどの辛さの中、私は静かに考える。これは、罰なのだ。バケモノとなった、私の、




"目を開けた。"
目を、覚ましてしまった。
最初に視界に入ったのは、あの不器用な幼なじみの顔だった。大丈夫か、そう問いかける彼の腕にしがみつく。
あの夢には続きがあった。建物に巻き込まれた私を救い出したのが、あの不器用な幼馴染だったのだ。どうしようもなく、悲しげな顔をした彼は、そのまま立ち去っていた。そして、もう1人の幼馴染の師匠様に連れられ、私は病院へと運ばれたのだった。
再び会った彼は、以前の彼とは違っていた。それを口に出すのは躊躇われた。何故なら、また一人大切な人を失ったと考えたくなかったから。もう失いたくなかったから。だから、彼にすがり付いて、引き止めるのだ。
ごめんね、そう呟いたバケモノの腕には、鈍く手のひらの形をした火傷が消えずに残っていた。
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