6

翼が去った後、賢斗は一人の空間に語りかける。

「良い加減、出て来たらどうだい、真希」

「あは、やっぱりばれてた?」

いつかと同じところから出てきた真希は、しかし悪びれる様子も無く賢斗の側へと移動する。

「君は毎度毎度、本当に学習しないね」

「酷いなぁ!
それで、全部終わったの?」

「そうだね、ようやく幕引きだ。
後は彼女があれをどう使うかだけど…二日以内に答えは出るだろう」

意味深な言葉を言った賢斗を真希は不思議そうに見るも、きっと聞いても答えてくれないのだろうと諦める。

「今回も駄目そうだね。
中々賢斗の常連になれる人はいなさそうだ」

「当たり前じゃないか」

真希の感想に対する賢斗の予想外の答えに、真希は怪訝な顔をした。

「大体、ここに来る時点で覚悟なんて出来てないんだよ
本当に覚悟が出来てる人間は他人の手を借りたりしない。自分で手を下すのさ。
ここに来るのは復讐はしたいけど自分の手を汚したく無いだとか、ほんのちょっと苦しめば良いと思った、だとかそういう考えの奴らだ。
だからこそ、俺の依頼人は皆狂ってく。自らの責に耐え兼ねてね。俺はね、“ちょっと苦しめる”なんて事をする程優しくないんだよ。
だけど自分で手を下す覚悟が無い人間が圧倒的に多いからこの仕事は無くならないのさ」

そう語って、賢斗はデスクの上にあるダーツを無造作に投げた。
真っ直ぐに飛んだそれは、ブレる事なく真ん中に突き刺さる。

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