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「君の復讐の動機自体が、虚構だったわけだ」
「…貴方は知ってて…」
「一度受けた依頼はやり抜くのが信条でね。
それに、構わないさ、動機が虚構であったとしても、どんなに理不尽な復讐であったとしても。
それが依頼人にとっての復讐に成り得るならば俺はやるし、依頼人にとっての復讐に成り得なくても人間に復讐するのが俺の目的だからね、過程は違えど結果は変わらない」
くすくすと笑う賢斗は、何処までも人間離れしていた。
翼は狂いそうになる理性を必死に留めて吐き捨てた。
「化け物…!」
「光栄だね、そう言ってもらえるとは」
悪びれも、怒りもしない賢斗に、翼は震える声で尋ねた。
「…依頼の追加、受けて貰える?」
「ものによるけど、どうぞ?」
「貴方に復讐がしたい…!」
すると賢斗はやっぱりね、と言うように笑顔を浮かべた。
「残念だけど、それは受けられないね。
俺に復讐するのは俺って決めてるんだ」
何か言おうと口を開いた翼だが、そんな暇を与えず賢斗は言葉を紡いだ。
「ねぇ、一体何が気に食わないのさ?こうなるように望んだのは君だろう?責任転嫁も甚だしいよ。
真実はいつも救いであるとは限らない。
ねぇ、教えてよ、肉親を殺して、無実な身内を取り返しのつかないところへ落とした感想はどう?」
嗤いながら告げられた言葉に、翼の理性がプツリと音を立てて切れた。
乾いた笑いを上げて、翼は叫んだ。
そんな翼の姿を、賢斗は愉悦を滲ませた顔で見ていた。
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