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「嘘よ!」

「嘘じゃないさ。少し、君について調べさせてもらったよ。
君は自分の父親を随分好いていたようだけど、本当は殺したいくらい憎んでいた。何故か?
彼は家庭内暴力が酷かったからだ。君のその痣の殆どは彼によってつけられたものだ。君の母親も、真崎玲子や真崎美里も同じように苦しんでいた。
だけど、人間っていうのは身勝手な生き物な生き物だからね、稀に有るのさ、自分の中の記憶を改竄してしまうんだ」

翼は逃げ出してしまいたかった。
しかし、賢斗の赤い左目がそれを許さない。

「度重なる暴力に、君はついに耐えきれなくなった。だからあの日、家に真崎真人だけが残るあの日に君は家に火を放った。大方、飲み物に睡眠薬でも入れたのかな?
しかし自分が父親を殺したという事実を認めたくなかった君は、自分に都合の良いように記憶を作り変えてしまった。
君の父親を殺したのは義母でも義妹でもない、君自身だ」

嘘だ、と叫びたかった。
しかし、何故かそれが出来なかった。
賢斗の言葉に触発されて、何かが翼の中に湧き上がってくる。

賢斗が赤い左目で翼を射抜くと、不意に翼は全てを思い出した。

度重なる暴力、吐き出される罵声。
酒が入ると、更に酷かった。

あぁ、そうだ、翼を苦しめていたのは他でも無い、父親だった。

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