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「どうしたんですか?顔真っ青ですけど…」
「で…電話が…」
震える手で携帯の着信履歴を見せると隼人の顔が険しくなった。
「例の人ですか?」
「多分…」
しかし、そうだとしたら何故彼は美里の携帯の番号を知っているのだろうか?
「…これから帰宅ですか?」
暫しの沈黙の後、隼人は静かに聞いた。
美里はこくり、と頷く。
「…送ります」
「え?」
毎度隼人の言葉には驚かされる。
一瞬言われた事の意味が分からず瞠目した。
「…もしかしたら、その人がまた家の前にいるかもしれません。
僕は特に用事も無いですし、送らせて下さい」
「お…お願いします…!」
普通なら断るべき所なのかもしれない。
しかし今は一人になりたくなかった。
美里が切羽詰まったように言うと、隼人はいつもの様に優しく微笑んだ。
馴染んだ帰り道を、二人並んで歩く。
何も無ければ楽しめたのだろうが、今は恐怖でそれどころではない。
「あの…隼人さんは何で…私にそんな良くしてくれるんですか?」
ずっと気になっていた事を問いかけると、隼人は困ったように、
そして悲しそうに笑った。
「…僕には、妹がいたんです。
生きていれば、ちょうど美里さんと同じくらいの」
「え…」
「二年前に、ストーカーにつけられて…挙句、殺されました」
そう語る隼人の表情は硬い。
「だから…放っておけなくて」
すみません、と謝りながら隼人は笑った。
美里はなんと声をかけたらいいのか分からず、首を振る事しか出来なかった。
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