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「帰って来てないわよ。
また電話で大丈夫だから、ってだけ。本当にしょうもない子…」

ーーそれならば、君達の場合はどうなるのかな?

ーー俺は、全て知ってるよ。

不意に賢斗の言葉が蘇り美里はぶるりと身震いした。
はったりだとは思えなかった。

(違う違う!
私は何も悪くない!)

何度も自分に言い聞かせるように言っても、賢斗の声が離れない。
気がついたら、携帯を握りしめ、今日貰ったばかりである隼人の番号にかけていた。

『ーーはい、結城です』

きっちり三コール後、美里が知る隼人の声が聞こえた。

「…隼人、さん…っ」

震えた声で隼人の名を呼ぶと、何か察知したらしい隼人が柔らかい声で美里に落ち着くように言った。

そのまま隼人は美里が落ち着くまで電話を切らず、ずっと美里に付き合い、美里は自分の心が随分楽になるのを感じた。

ーー隼人が居て良かった。

そう心の底から思う美里は知らない。
彼女が隼人に電話をしている間、ひっそりと笑みを浮かべた者が居た事を。

既にレールは敷いてある事を、彼女達は知らない。



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