8
一方の美里は、賢斗から解放された後どうしたのかよく覚えていない。
気がついたら、家の中にいた。
「美里?」
何時の間にか目の前には母である玲子が立っていて、心配そうに美里を見つめた。
「どうしたの?ぼんやりして」
そう言いながら美里に伸ばした玲子の手を、反射的に美里は振り払った。
「触らないでっ!」
「…美里?」
ハッと気づくと、呆然とした玲子の顔が目の前にあった。
「あ…ごめん、ぼーっとしてたから驚いちゃった」
慌てて作り笑いを浮かべる美里を、相変わらず心配そうな顔で玲子は見た。
「本当に?何かあったらすぐ言うのよ?」
「うん、ありがとう。
そうだ、翼は?」
すると途端に玲子は顔をしかめた。
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