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ゆるりと口角を上げて、賢斗は言葉を紡いだ。

「俺は、全て知ってるよ。
君達が何をしたのか、何故君の義姉である真崎翼が帰ってこないのか、そして…何故真崎真人が死んだのかも、ね」

最後の言葉に、ついに美里の中の何かが切れた。
早く逃げなければ、とそれだけしか分からない。
くるりと踵を返し、家に入ろうとする美里の腕をパシリと賢斗は掴んだ。

「逃げるのは反則だよ、今まで散々逃げてきただろう?」

「っ離して!」

反射的に振り払った美里の腕が、賢斗の顔面すれすれを過り、その反動で賢斗の眼帯がぱさりと落ちた。

鮮血のように赤い左目が、露わになる。

「ひっ…!」

その瞳を見て、再び美里は動けなくなった。
ただただ恐怖に支配された身体は、逃げたいと思う心と裏腹に一歩も動こうとしない。

対する賢斗はそっと露わになった左目に触れ、やれやれとため息を吐いた。

「あーあ、取れちゃったじゃないか。
一応は君への配慮だったんだけどなぁ。
まぁいいや、お陰様で視界は良好だ」

人を喰ったような言葉を吐いて、賢斗はそっと美里の耳元で囁いた。

「逃げられないよ、業からは」

赤い瞳で美里を一度見やり、そうして賢斗は去って行った。

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