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「こんばんは、真崎美里さん。
そんな怖がらなくても別に獲って食べたりしないよ」

そう言ってクスクスと薙は笑うが、美里は相変わらず動く事が出来なかった。

「…何の用ですか…」

ようやく絞り出した声は、酷く弱々しいものだった。
しかし薙ー賢斗ーは、それには答えず逆に美里に問うた。

「ねぇ、虐待って、何処までが虐待なんだと思う?」

ーー虐待。
その言葉に美里の心臓は凍りつく。

「過度に手をあげるのはもちろん虐待だ。
育児責任を放棄することも虐待だ。
性的、心理的な暴力も虐待だと言う。
ならば、愛さない事は虐待だろうか?
心理的な暴力だと言う人もいるかもしれない。
だけど愛さない事と暴力は同義だろうか?
お互いに愛さないのであれば、それは虐待とは言わないのではないか。
寧ろ、愛される事が暴力に成り得る場合の方が多いんじゃないかと俺は思うんだけど。
それならば、君達の場合はどうなるのかな?」

賢斗の言葉に美里は目を見開いた。
冷や汗が噴き出し、心臓が激しく脈打つ。

ーー彼は一体何を知っている?

「今、こいつは何を知っている?って思ったでしょ」

美里の考えなどお見通しだと言うように賢斗は嗤った。
ゆっくりと美里に近づき、目線を合わせるかのように屈み込む。

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