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口元には微笑が浮かんでいるが、露わになっている黒い右目は、深い憎悪を滲ませて美里を射抜く。
顔立ちが整っている為、余計に人間離れして見える。
彼は美里と目が合うと、その目をスッと細めて笑った。
美里は金縛りにあったかのように、身動き出来なかった。
一歩でも動けば、彼に殺されるような気さえした。
何かを言おうと口を開いた彼はしかし何も言う事なく、もう一度ゆるりと笑うとそのまま踵を返して去っていった。
彼の姿が完全に見えなくなると、美里はその場に座り込んだ。
彼は何者だったのか、気になると同時に知りたくないとも思った。
関わってはいけない人だ、絶対に。
そんな予感めいたものが美里の中にあった。
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