3
どうやら翼はまだ友達の家に居る様で、家には美里一人だった。
そのまましばらくぼんやりとして居た美里だが、我に返るとテスト勉強をしなければ、と机に向かう。
しばらく勉強していた美里だが、教科書を出そうと鞄をあさり、ある事に気がつく。
「定期落とした…」
恐らくあの青年と衝突した時に落としたのだろう、いつも鞄に入っている定期が見当たらなかった。
「最悪…」
明日一応青年と衝突した場所で探してみよう、と考えた美里はため息を吐きながら勉強を再開した。
翌日、学校に行く途中で探してみたが案の定見つからず久しぶりに切符を買って学校へと向かった。
昨日と同じように午前中にテストが終了したので昼休みに外に出る社会人に紛れて歩く。
「あの…真崎美里さん、ですか?」
「え?」
唐突に後ろから名前を呼ばれて振り向いた先には昨日ぶつかったあの青年が立っていた。
「真崎美里さん、ですか?」
さっきと同じ質問をする青年は手に何かを持っていた。
「えっと…そう、ですけど…」
何故名前を知っているのか、不審に思った美里の心を見透かすように青年は穏やかな笑みを浮かべた。
[ 38/75 ]
[*prev][目次][next#]