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そんな昔の事を思い出し、賢斗は少し笑った。
「終夜と朝日屋か...
まぁよく出会ったものだよねぇ。俺としては出会いたくなかったけど」
心底嫌そうな顔をした賢斗だったが、一転して楽しそうな笑顔を浮かべた。
「ま、過ぎた事を言っても仕方ない。
さて、今回はどんな復讐劇にしようかなぁ...」
誰も居ない部屋で、賢斗はクスクスと笑った。
そして不意に笑いを止めると、何か考えるように暫し沈黙した。
赤と黒の奥で、憎悪が揺れる。
その瞳は何も見ていないようで、しかし彼にしか見えない何かを見ているようでもあった。
数分後、彼はニッコリと笑った。
それは、復讐劇の幕が上がる合図。
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