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翼が去った後も、賢斗はしばらく動かなかった。
目を閉じ、一度呆れたようにため息をついて、ゆっくりと目を開けるとデスクの上にあったダーツの矢を壁にある的へ投げる。

カッ、と軽快な音を立てて、矢はボードの真ん中に突き刺さった。
それをつまらなさそうに一瞥し、賢斗は誰もいないはずの空間に話しかけた。

「盗み見は感心しないなぁ。
用があるなら出て来なよ。依頼なら喜んで受けつけるけど、君はまず間違いなく依頼人じゃないよねぇ...真希」

先ほどまでの笑顔は無く、ただ無表情で話す賢斗にはまた違う不気味さがあった。

「あは、ばれた?」

しかしそんな賢斗の様子を気にする事もなく、キッチンの奥の納戸から出て来たのは翼が来る前に立ち去ったはずの青年、朝日屋 真希。

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