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そんなはずはない、と翼は思い直し再び語り出す。
「貴方が言った通り、憎しみは中々消えなかった。そんな時、あの話を聞いたの...」
虚空を睨む翼の目は深い憎悪の色が映り、それを賢斗は面白そうに眺めていた。
父が死んでから生活は一気に苦しくなり、ストレスからか、玲子は度々翼に当たるようになった。
実の娘である美里には優しく接し、翼に対しての態度だけがどんどん冷えていった。
話しかけても無視される事があった。
頬を平手で叩かれた事があった。
ご飯を作ってもらえない事があった。
玲子の翼への接し方は、いつしか虐待へと変わり、美里が翼を見る
目も冷たいものとなった。
いや、二人とも本性を現したと言うべきか。
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