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「...だけどそれも、長くは続かなかった」
翼はそう言って、少し目を伏せる。
賢斗は相変わらず笑顔を浮かべたままその様子を見ていた。
その目はどこか値踏みするような光を放っていたが、そんな賢斗に気づかず翼は再び語り出した。
なんて事の無い、いつも通りの一日だった。
強いて言うならば、その日は休日で、いつもよりも少し寒かった。
翼はその日、友人と映画を観に行く約束をしていて昼位に家を出ていたし、玲子と美里朝早くから二人で買い物に出かけていた。
家は、父一人だけだった。
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