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どうしたら良いのか分からずそこに立ち尽くした悠希に部屋の奥から声がかかる。

「そんなとこに立ってないでこっちに来たらどうだい?
別に捕って食ったりしないからさ」

先程扉の前で聞いた声と同じ声だ。
緊張しながら悠希はゆっくりと足を進める。

奥に進むと部屋に溶け込むような漆黒のデスクと椅子があった。
その椅子に座っている人物は背を向けて、悠希を見る事無く告げる。

「いらっしゃい、ようこそvengeanceへ」

決して無愛想な声音では無くあくまで淡々とした口調でそう言うとようやく椅子をくるっと回して悠希と向かい合う。

そこに座っていた人物を見て悠希は拍子抜けした。

ヤクザのような強面の人を想像していたのに、目の前にいるのは16歳の悠希とそう離れていない、精々18、9歳位の美青年だったのだ。
その青年は自身も部屋に溶け込むように黒髪に真っ黒なブカブカのパーカーにズボンという出で立ち。
病的に白い肌が漆黒の部屋でやけに浮いて見えた。

驚くべき事に長めの前髪から覗く青年の左目は血のように赤かった。

青年の方も悠希を見て驚いたように目を見開く。

「おや、あんたが客かい?
こりゃまた珍しいお客さんだな」

赤い目に気をとられていた悠希はムッとして言い返す。

「馬鹿にしてるの?」

「え?あぁ、いや馬鹿にしちゃいないさ。
うちは来るもの拒まずだからねぇ」

くっくっと青年は笑う。

「で、依頼人さんの名前は?」

「鈴村悠希だ」

「ふぅん、俺は終夜賢斗(よすがら けんと)。よろしく」

青年―賢斗―は相変わらず感情を最低限に留めた淡々とした口調で名乗ると悠希が自分の顔を、正確には左目を見ていることに気がついた。

「あぁ、これかい?
生まれつきでね、別に超能力持ってるわけじゃないから安心してよ」

人を喰ったような事を言って、改めて悠希に向き直る。

「さて、鈴村さん。
一応確認しておくけどうちがどういう店かは分かってるよね?」

「……あぁ」

「それは結構。
じゃあ早速用件を聞かせてもらおうか」


デスクにあるボールペンをくるくると回し、ニヤニヤと笑いながら賢斗は悠希に訪ねる。

悠希は頷くと話始めた。

何故このvengeanceに足を運んだのか……





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