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「別にその後気が変わったって不思議じゃないし、あの時の彼らの精神は不安定だった。
君の話をちゃんと聞いていたのかも怪しいところだね」
肩をすくめながら言う賢斗に、悠希は噛み付くように反論した。
「そんなの全部憶測でしょ!」
「その通り、だけど君の意見も憶測の域を出ないよ。
いや、君の場合は憶測というより、そうあって欲しいという願望と言った方が正しいかな?
手書きの遺書まで見つかったんだ、現実を見なよ。
彼らは自殺したんだ」
「あんたがその場に居なかったっていう証拠はない!」
「ハハッ、そりゃそうだけど、それなら俺がその場にいたっていう証拠も無い。
そもそも、なんでそんなに俺を疑うのさ?」
「あんたが一番怪しいんだよ!」
興奮しているのか、悠希の声が段々大きくなっていく。
賢斗はやれやれ、とため息をつくと笑顔で悠希を見る。
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