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クスクスと賢斗は笑うが、その目は笑っていない。

「あ、そうそう、一つ訂正しておこうか。
さっき君達は自分の事を人殺しだと言ったね?
まぁ間違ってはいないんだけど直接やったのは園原カナなわけだから君達は厳密に言えば人殺しじゃあない。
君達の本当の罪は別の事さ」

「何...?」

賢斗は笑う。

蔑むように、見下すように。

あるいは、優しく、哀れむように。

「分からない?
君達の罪は信じた事、そして信じなかった事さ。
矛盾してる?そうかもね。
でも知ってるかい?
世界は矛盾で満ち溢れている。矛盾で世界が成り立ってると言っても良い。
『不幸』無くして『幸』は無い。
『死』無くして『生』は無い。
『憎悪』無くして『愛』は無い。
『闇』が無ければ『光』は無い。
だって、闇が無ければ人はそれを光と認識する事なんて出来ないのだから。
逆に言えば、光があるから闇があるのさ。
それと同じで『不信』無くして『信』は無い。
何かを信じるって事は別の何かを信じないって事だ。
君達はそれを間違えた。それが罪だよ。
ま、可哀想と言えば可哀想だけど、自業自得だよねぇ」

長々とした演説を終えると賢斗はやれやれ、とため息をついた。

「だから他人なんて簡単に信じるもんじゃない。
真実と事実は別物だって、言っただろう?
さて、俺の言いたい事はこれで終わりだからさっさと飛び降りるなりなんなりしてくれて構わないよ。
死んだからって罪は消えないし、業からは逃げられないと思うけど、少なくとも今自分を責める声からは逃げられる」

遼と要は少しだけ躊躇う素振りを見せ、結局立ちつくしてしまう。


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