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闇に溶け込むかの様に、否、自らが闇であるかの様なブカブカの黒パーカー、黒ズボン、黒髪という黒ずくめの出で立ち。

その中で目立つ、白い肌と赤い左目。

口元には微笑。

彼は漆黒を身に纏い、しかし漆黒に溶け込むことなく、静かにそこに存在していた。

「...神無...月...」

「やだなぁ、ちゃんと自己紹介したじゃないか。
俺は終夜賢斗だよ、神無月荊じゃない」

本心の見えない笑顔を貼り付けたまま賢斗は二人へと歩み寄る。

二人と賢斗の距離があと二メートル程になった時、要が沈黙を破った。

「...来るな」

その、どこか切羽詰まったような声に賢斗はピタリと足を止める。

「何しに来た?
俺達を止めに来たのか?」

「止める?俺が?君達を?まさか!」

目を見開き、わざとらしく驚いてみせる。

「人間がわざわざ自分から消えようとしてるのを俺が止めるはずないじゃないか!
そんな勿体無い事、俺には出来ないよ。
あぁそれとも、自分は止められるだけの価値がある生き物だと思ってる?だったら自惚れもいいとこだ!」

深い闇の様な黒い右目で遼を、鮮血の様な赤い左目で要を、それぞれ見ながら賢斗は言葉を紡ぐ。

「言っただろう?
俺は君達の末路を何処かで見させて貰うって。
なんとなく、君達はここに来るんじゃないかと思って来たら案の定だ。ま、声を掛けたのは俺の気まぐれだけどね」

「...神...いや、終夜、お前は何者なんだよ...!」

神無月、と言いかけたのを訂正しながら今度は遼が言葉を発する。

「え?やだなぁ、何か勘違いしてる?
俺はただの人間だよ、ただ、左目がちょっと特殊で、人間が物凄く嫌いな、ね。だから俺は君達が嫌いだし、園原カナも、依頼人の鈴村悠希も嫌いだし...俺自身も大嫌いさ。
人間なんて滅びてしまえば良いなんて厨二病みたいな事を本気で思ってるし。
ただ、出来るなら俺は人類最後の一人でありたいよねぇ...」

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