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「あたし、なんども言ったよね、何もしてないって。
だけど、詩音以外は要も、遼も、誰も信じてくれなかった。
それだけならあたしだってこんな事しなかった。
あたしが一番許せなかったのは、詩音を殺して更にそれをもみ消した事だっ!」
怒りに声を震わせて、悠希は叫んだ。
「詩音が何をした!何で詩音が死ななきゃならなかった!」
「さしずめ、友人の仇ってとこかな?
吐き気がするくらい美しい友情だねぇ。
さぁ君達はこれからどうするのかな?
いや...人を貶めて、挙句に人の命を奪った君達は、これからどうなっちゃうのかな?」
賢斗は笑う。
楽しそうに、優しそうに、蔑むように、嗤う。
要や遼達2-Cの生徒は賢斗の言葉など聞いていなかった。
ただただ絶望した顔で座り込んだ。
その様子を見た賢斗の笑顔は歪んでいく。
「良いねぇ、その顔!最高だよ!
人が絶望した顔程見ていて楽しいものは無い!
これこそ最高の報酬だよ!あぁ、これだからこの仕事は止められない!」
突然賢斗は振り返り、悠希を見た。
「さて、依頼は完了かな?」
「...あぁ、十分だ」
「それは良かった。
じゃあ俺はこれで失礼するよ。
こんなに人間がいるんじゃ気持ち悪くて仕方ないからね。
君達が自分の罪とどう向き合っていくのかには興味があるけど。
ま...その罪を裁くのは俺の仕事じゃないから俺は君達の末路を何処かで見る事にするよ」
そう言って彼らに背を向け、ヒラヒラと手を振りながら賢斗は歩き出した。
「あぁ、そうだ」
数メートル歩いた所で足を止め、くるりと振り返った。
「俺はいつでも、あそこにいるよ」
悠希を見ながらそう言って、優しく、意味深に微笑むと賢斗は再び歩き出した。
その、何処か人間離れした後ろ姿を、悠希達はただ見送る事しか出来なかったーー
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