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そのまま自分の制服を切り刻もうとしたカナの手は、賢斗の言葉に止まった。

「ねぇ、君はある一人のクラスメイトを嵌めたことがある、そうだろ?」

「な…」

急に触れられた過去に思わずカナはたじろいだ。

「君は、佐野要に好意を寄せていた。
しかし、佐野要はあるクラスメイトに好意を寄せていた。
君は随分嫉妬したんじゃないかい?」

賢斗が語る話に、カナは言葉を失った。

「なんで…」

「悔しかっただろうねぇ、君は筋金入りのお嬢様だ。
今までは全部自分思い通りになっていたのに、初めて思い通りにいかない事が起きてしまった。
君は、許せなかったんだ、そのクラスメイトが」

「そこで君は考えた。邪魔な奴は消してしまえばいいってね。
そして今みたいに自作自演してさも自分が被害者であるかのように振舞った。
計画は上手く行き、クラスの殆どが君の味方になった。もちろん、佐野要も。
あと少しでそのクラスメイトを完全に孤立させらるというところで思わぬ障害が出来た。
九条詩音だ。
彼女だけは君じゃなく、そのクラスメイトを信じた。さぞかし苛立っただろうねぇ」

一旦言葉を切ると、賢斗は歪んだ笑みを浮かべた。

今までのどれとも違う、相手に恐怖しか与えない笑みを。

「ひっ…!」

カナは思わず悲鳴を上げた。

目の前にいるこの人物が、人間とは思えなったのだ。

「君は九条詩音に自分の味方になるよう警告した。
だけど彼女は頑として聞き入れなかった。だから、ある雨の日、突き落としたんだ」

スッ、と賢斗の指が上を指す。






「……屋上から」


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